10 間一髪
蔓のお陰もあり順調に歩き、微かに川に出た時にあった大きな岩が見えてきた。
裸足で丸太橋まで歩いた時は、この数倍は時間をさいた気がする。
ハッ!?
そういえば、僕お尻丸出しなのにシャリィさんとコレットちゃんは後ろからついて来てる。
ずっと僕のお尻見られてたのか、は、恥ずかしい……
「ヒソヒソ、ユウ君のお尻赤ちゃんみたいで可愛くない?」
「フフ、そうだな」
「ハートを逆さにしたみたいなアザがあるよ。クスクス」
あーー、今お尻がなんとかって聞こえた! やっぱり僕のお尻を見られてたー。
ああ、さっきは前も見られて今はお尻もずっと見られていたなんて……
ハァハァ、僕このままアブノーマルな世界にハマってしまいそうだよ。
ゴロゴロ
あれ、突然うぅ……や、やばい、空腹を紛らわすために水を飲み過ぎたせいか魚のせいか分からないけどお腹の調子が悪い。
お、おならがでそう……ど、どうしてこのタイミングなんだよー。
お、落ち着け……
今はお尻には何のフィルターも無くてストレートで出てしまう。
こんな状態でオナラしたら臭さのあまり僕は魔獣じゃないかと疑われて二人に狩られてしまうかもしれない……
くそー、異世界きても運は僕に味方しないのかよ!?
後ろを振り返り二人の顔を見てみると、コレットちゃんが、どうしたの?っと不思議そうな表情をしていた。
うっ……キョトンとしたその表情も可愛い~。
だめだ、あんな可愛い子に向けて放屁すわけにはいかない! この僕の命に代えてもだ!
しかし、これはやばい…・・ おい、隣の変態ヤンキー、何とかしろ僕を助けろ。
僕はあいつの方をチラチラと見て何度もアイコンタクトを送る。
それに気づいた様子だが、キョトンとした表情を浮かべ口が半開きになり僕の方を見てる。
その顔やめろ!お前がキョトンとしてても全然可愛くないし、アホの子みたいにしか見えないのだよ!
くっそー察しろよ、この役立たずがぁ!
あっ、怒ったら更に出そうになってきた……
ゴロゴロゴロ
あああああ、これは……や・ば・い!
いいか、今起こってることを正直に言うぜ。
オナラか下痢便か分かりません……
ゴロゴロゴロ
うっ、うう。
あいつが僕の方から顔を背けた。
ん? 身体が揺れている。
こいつ!?
さっきのゴロゴロってお腹が鳴った音が聞こえて勘付きやがったなぁ!
笑ってんじゃねーよ、助けろ!
ハッ!?
ま、まさかここまで計算して僕に魚を多めに食べさせたのか?
前方に目印の巨石が見えて来た。
「あ、あの岩の所を森に入りましょう」
「あ~い」
コレットちゃんは元気よく返事をした。
「なぁ、森をどれぐらい入るんだ?」
弾正原が僕に聞いてきた。
「た、たぶん蔓を巻いていて裸足よりは歩きやすいから数分だと思います。あそこに見えてる草が倒れている所から出てきました」
……出て来た。
「では跡を辿れば簡単に行ける。森の中は危険なのでお前たちはここで待っていてくれ。私とコレットで行ってこよう」
た、助かった! 早く、早く森の奥まで入って行ってー早くぅぅ!
「どちらか一人が俺たちを見張ったほうがいいんじゃないか?」
ちょっ、おまっ! 何言ってんだこいつ? 二人で摘みに行くって言ってるじゃないか!
何で引き留めてるんだよーって、絶対僕をオモチャにしてやがる。
僕に漏らさせて、自分のポジションを揺ぎ無くさせる算段か……性格悪すぎるぞこの糞ヤンキーめ!
あぁ、糞ってフレーズでよけいやばくなってきた……
そろそろ僕の限界が近づいてきていた。
か、身体が、勝手にクネクネと動き出す。だ、駄目だ、制御できない。
ああ、そんなに見つめないでコレットちゃんとシャリィさん。不思議な踊りでMPを奪おうとしてる訳ではありません。
あっ……二人の頬が赤くなって僕から目を背けた。
バ、バレた……
コレットちゃんはさっと森の方を向き「僕摘んでくるね」と、言ったその言葉に被せるがごとくスピードで弾正原の口が開く!
「コレットちゃんが残って俺らを見張るかい?」
こ……このやろうぉぉぉ!
殺す!僕が魔法を使えるようになったら絶対にこいつを殺す! そして川に流してやるからな!
「ううん、僕行ってくる」
気まずそうに森へと駆けて行く。
「ま、待て危ないから一人で入って行くな。私も行く」
シャリィさんは僕の方を可哀そうな人を見る目でチラ見してからコレットちゃんの後に付いて森に入って行った。
二人が草木で見えなくなった瞬間僕は川に向かって走った!
魔法で肉体強化でもさてたかのようなスピードで川に向かって走り出す!
これは間に合ったと思ったが!?
僕の両手が後ろに引っ張られ足が滑り転倒したその時!? ブーっと大きなおならが出た。
あぁ~、なんという解放感…… まるで僕の人生が満たされたまま終わりを告げ、このままゆっくりと天使たちに天国へ運ばれて行きそうな感覚。
深い眠りに入りそうだ……
しかし、その至高タイムをかき消す、悪魔の如き笑い声が聞こえる。
「お、オナラだったのか、うんこかと思ってたよ。あはははははは」
倒れている僕を見て涙を流しながら笑っている……
うん、知っていたよ知っていたよ、お前が確信犯なのは、うん。
こいつらヤンキーは他人を利用(虐め)して自分たちが楽しむ。ほんと皆同じです。
しかし、本当にオナラで良かった。
もし下痢便なら今頃この辺りは地獄絵図になっていただろう。
「あははははは」
……こいつまだ笑ってやがる。
「川へ入るなら一声かけろよ、ふふふ。繋がれてるの忘れてたのかよ、あははは」
忘れてるわけ無いだろ、確信してたなら一緒に走って来いよ。鳶の棟梁様の運動能力なら簡単だろう。
絶対わざとだこいつ……糞ムカつく!
けど、今はそんな感情を抜きにしてでも聞きたいことがある。ちょうど二人きりになったことだし。
落ち着いて…… 気持ちを切り替えて……
「あ、あの、チュースティって……」
「……今度、時間がある時にトイレがある所でゆっくり話すよ」
いや、今教えろよ? どうせ神様に会ってチート能力貰ってるのだろ。
どうせその時に教えてもらった挨拶の言葉だろ……
で、トイレがある所って、ほんとヤンキーってしつこく
僕がどれだけ恥ずかしくて必死だったと思っているんだ!
馬鹿にしやがって……
僕の経験からここで反応したら一生しつこく弄られる。ヤンキーの習性のようなものだ。ふぅ、再度落ち着こう。
「分かりました」
「あの二人、最初凄い警戒心だったな」
「そうですね」
「大石が言っていた通り、それだけ厳しい世界って事だよな」
「そうだと思います」
「俺らの世界でも女性は色々と大変なのに、お前の言う通りの世界なら比じゃないと思うけど……」
お前言う通りって、この世界の事を神様に聞いてないのかよ? それとも惚けているのかな……
「とにかく、今はあの二人を頼るしかない。それでいいか?」
「はい、僕も賛成です」
賛成どころか、大賛成です!コレットちゃん可愛いし、できることならずっと行動を共にしたい。こんな無神経なヤンキー無しでね!
「余計なことは言わず、出来るかぎり返事だけにしよう」
「はい」
……俺の服や道具を見て、あれぐらいの質問なのは助かるが怪しくもある。
この世界の人の考えが分からないけど、普通なら興味を持って色々聞いてきそうなものだ……
そしてさっきまで俺らから片時も目を離さなかったのに、放置して森に入って行ったって事はあの二人も当然内緒話をしているはずだ……
二人の結論が一致すれば、最悪服や道具目当てに殺される。
信用を得るために大人しく縛られてやったが、失敗だったかもしれない。
こんな蔓ぐらいそこら辺りの石を使って切ることはできるが、道具も取り上げられ武器は何もない。
戦うにしても大石では戦力にならないだろうし……
それに相手は武器も持ってる…… 俺が魔法が使えると言っても掌に火を出すぐらいでその後どうすればいいか分からないし、出せば体力も奪われる。
まぁ、それに揉めて女性を殴るなんて出来れば御免被りたい。
最初の目論見通り、大人しくして何とか信用を得るしかないな。
それにしても、大石がスパ草の場所を知っていたのは大きい。
目的の品と、俺の上着を売った金が入れば機嫌よく俺たちを解放してくれるかもしれない……なんてありえないだろうな。
けど、よりによってあの人に貰った上着を手放すことになるかもしれないなんて、出来れば売りたくはない……
この時、弾正原は大石に目を向け「仕方がない」そう心で思ったいた。
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