7 第一異世界人 ②

 


……はっ!? 何を呆けているんだ僕は! 手を、手をあげないと撃たれちゃうかもしれない。


 僕は急ぎ両手を上げ敵意は無いと示すと同時に、そうすることで何かアクションを起こしてくれることを期待していたが、女性は相変わらず無言で僕に弓を向けている。


 どうしよう、どうしよう、何とかコミュニケーションを取らないと……


 えーと、えーと、何か会話の糸口をって、僕は女性と話した事何て殆どないのに、いきなりこんな異世界の美人と話をしろと言われても無理に決まっている。


 それに言葉が通じるのか分からない……


 僕はなす術なくただ両手を上げ、その美しい女性を見ている事しかできずにいた。

 

 しかし、この人……ビキニと弓矢のマッチングが素晴らしく似合っている。


 このコスプレをエッチーな店が採用していて僕の目に留まっていたら、もしかして……

 って、こんな時に何を考えているんだ僕は!? 馬鹿じゃないのか!


 その時、自分でも気づいていなかったけど僕の瞳からは涙が溢れ出ていた。


 この時の心境をどう表現すれば良いのだろうか。


 弓を向けられていることによる恐怖。初めてこの世界の人に出会えた安堵。僕の知識にあるイメージ以上の異世界人女性を見た興奮。


 その全てが混ざり合い、初めて感じている複雑な感情が無意識のうちに涙を溢れ出させていた。


 正直少しエロスも感じていますが、決してエロスで興奮している訳ではありません。


 ……思い切って話しかけてみようかな? けど女性に話しかけるって何て言えばいいんだ!?

 

 握手してくださいでいいのかな?

 いや、握手券持ってないから握手はしてくれないだろうな。


 そうだ、あいつは何してんだ!? こんな大事な時に、どんだけ長いうんこひってんだよ!?


 そして彼女の口元が微かに動いたように見えた瞬間、対岸の上流側から音が聞こえそちらを向くと、別の女性が僕に弓を向けていた。


 第二異世界人だ!


 上流側の女性は、肩までの茶髪で茶色の服を着て同じく茶系の細いズボンを履いている、顔はハッキリと見えないが、革のパットを所々に着けているのかな?


 そしてたぶん、歳は10代半ば……フッ……フフフ。


 先ほどからせめぎあっていた僕の感情の中で新たに芽生えてきたのは歓喜だった。    

 うぉー、テンション上がりまくってきた!


 ビキニの女性に目を戻すと、彼女が一瞬だけ僕の下半身にチラっと目を向けた。


 あぁぁぁぁ、そうだ、僕は今全裸だった!


 今完全に見られたよな。いや、ずっと見られてたのか。


 こ、こんな綺麗な女性に僕はずっと下半身を見せつけていたなんて、恥ずかしすぎる。


 初めて女性に見られているのに、しかも、これが噂に聞くあの3Pか!?

 はああぁ、何だこの高揚感は……今まで一度も感じたことがない。

 

 や、やばい、下半身がむずむずしてきた。耐えろ耐えろ耐えるんだ!


 ここで大きくなったら、この二人が怒って矢を撃ってくるかもしれない、耐えるんだ。だけど、命がかかっていると思うと余計興奮してきた。


 駄目だ、止まらない。うぅ、お願いだから大きくならないでぇ。


 あぁぁ……すみません、成長してしまいました……お願いします、怒らないでぇー、致し方のない生理現象なのです。


 僕の大きくなった下半身を見たビキニの女性の顔が険しくなっていく。


「死にたいらしいな」


 ああぁ、撃たれる!?


 その時、ビキニの女性は素早く下流側に弓を向けた。

 

 僕も釣られて下流側を見るが何もない。


 しかし、数十秒後あいつが戻ってきた!


「チューしてー」


 ん、何か言ったかあいつ?


 弾正原は僕と同じで両手を上げている。


 そしてもう一度


「チューしてー」


 と、川の音に負けないよう大声で叫んでいた。


 お、お、お前、元の世界でモテていたからって、異世界の弓を構えてる女性にいきなりチューしてって馬鹿か!?


 う、撃たれるぞ。


 いやむしろもう撃たれてしまえ、お前みたいな馬鹿は撃たれて川に落ちで流れていけ。


 ……あれ?


 お前、パンツ履いてたのに全裸じゃね?。


 うんこ漏らして捨ててきたのかな……あっ!?さてはこいつ見てたんだな!?

 自分もこのプレイに参加したくてパンツ脱いできたんだろ!?


 ふざけんな、先に見せたのは僕の方だぞ!

 僕の方が大きいんだからな、お前は引っ込んど・・・ヶえぇぇ、お、おかしい!?


 昨日見たのと全然違うじゃん……で、でかい!?


 僕のと比べると普通のザクと専用ザクぐらい倍率が違う。


 どういうことだよ!?


「もぅ手を降ろしていいから二人とも前を隠せ」


 え?日本語……


 よ、良かった、言葉は通じるみたいだ。


 見ると、ビキニの女性は弓矢を降ろし頬を赤らめ、険しかった顔が逆に恥ずかしそうな表情になっていた。


 えっ!?どういうことだよ。


 あいつがチューしてって言ったから照れてるのかな。


 嘘だろ、モテるなんてレベルじゃないぞ。


 神だよ神、こんなの神様しかできないじゃん!

 ……あー、はぃはぃはぃ、なるほどなるほど。

 あいつ神様に会ってないって言ってたけど、会ってますよこりゃ。

 そして、女性を意のままに操るチート能力貰ってますね。


 あいつは少し下流側に戻りパンツを履いて再びこちらに歩いてくる。

 やっぱり途中でパンツ脱いでやがった……


 少し名残惜しいけど、僕もあいつの上着を腰に巻いて隠した。


 ビキニの女性が剣に手をかけた状態で丸太橋をこちらに渡ってくる。


 上流の少女はその場から動いておらず弓矢を下げてはいたが、まだこちらを警戒してるようだ……


 しかし、このビキニの女性……とんでもないスタイルだ。

 僕は恥ずかしくて直視することが出来なくて下を向いた。


「山賊にでもやられたのか?」


 その声に反応して僕が顔をあげようとすると、あいつが「実はそうなんだ」と、普通に返した。


 こんな美人で胸はけしからん乳、そして露出の激しい異世界女性を目にして普通に話せるって凄いスキルだ。それも神様に貰ったのかな……


 あいつはゆっくりと僕の隣まで戻ってきた。


 ビキニの女性は5mほど先に立っていてそれ以上距離を詰めようとはしてこない。


 上流の女性といい、その行動からこの世界の厳しさが汲み取れる。


「ずいぶん珍しい色の生地だな」


 目の前のビキニの女性が僕の腰に巻いているあいつの上着を見ていた。


「ああ、同じのならここにもあるよ」


 そう言って乾かしていたズボンを指さした。


「なぁ、その上着をあの女性にゆっくり投げてやってくれ」


 いや、ズボンの方をお前が投げればいいだろーに!?


 これ投げたら隠すものが無くなるけど……ええいままよ!

 僕は上着をビキニの女性の方に下からゆっくり投げた。


 ……こんな緊迫した場面でなければ絶対横投げで投げてただろうな。横投げちゃんのファンだけに。


 ビキニの女性は僕等から目を離さず上着を拾い上げ、少し後ろに下がりまじまじと見始める。上着を投げた僕は両手で大切な所を隠した。


「これはどこの国の物だ?こんな服は初めて見た」


 ……魔法技術で作った服でもないようだ。


「このポケットの開閉は……初めて見る。こんな物は見たことない」


 恐らくファスナーを見て驚愕しているようだ。


 その驚き具合や、彼女の服装や装備を見ても分かるが、僕の知識の異世界と同じ感じがする。


 つまり上手く立ち回ればここで殺されることは無いし、もしかしたら保護してもらえるかもしれない。


 ビキニの女性はまだ服を凝視している。


 

 ……服の内側に見た事も無い文字がある。この二人の男は……



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