始業式にて

「えー…夏季休暇が終了し…えー生徒の皆さんはより一層、学業に励み…えー…」

 始業式。校長が壇上で今までに何十回も聞いたような台詞を堂々と偉そうに語っている。この体育館は、サウナかってほど蒸し暑くて、つまらない話を永遠と聞かされる…。はっきり言って地獄だ。

 「校長話長ぇ…。」

と言って隣にいる椿の方を見てみると、やはり同じことを考えていたようで、茶色がかった綺麗な目と目が合った。

「いつにも増して長いわね…。あーこのくだりさっきの話と同じじゃない。ひとつにまとめることが出来ないのかしらこの先生…。」

小さな口から刺々しいご意見が飛ぶ…。

「それな〜!同じことばっか言ってるよねぇ。みれい飽きた〜。」

頬を膨らませて茶色のゆるふわヘアーを小柄な少女…美澪がふわふわ揺らしている。

「美澪…。そうだよな飽きちまうよな。」

そう言って白目を向いてみせると美澪が大きな瞳を見開いた。すると…――ブフォ!!!――

「ちょっ!まーちゃんなんて顔してんの!!!無理…面白すぎるよ…。」

ツボに入ったのか、ゲラゲラと大笑いしている。

「麻紀!?美澪に何したのよ!」

椿は私が変顔をした時こちらを見てなかったらしい。

「えっとねぇ…何かって言うと…ほれっ!」

――ブフォ――

「ちょっそれは…なんて顔…」

柄にもなく椿が吹き出した。……楽しい。これ。

「その顔をすぐやめて!」

「まーちゃんそれはダメ!あー無理耐えられん。」

こいつらほんとにツボが一緒なんだな…。

「ごめんごめん……反省してるっ!」

と言って今度は、鼻を膨らませて目を極限まで見開いてやると…。

――ドタッ――

2人して笑い崩れた。

「「ギャハハハハッ!!!」」

ちょっと…そんなに大声で笑ったら…。

「椿…美澪……」

2人を止めようとした直後に人の気配を感じ、恐る恐る振り返ると、そこには鬼の形相をした担任の美恵子ちゃんがたっていた…。

「深瀬、桐谷、香山、あんた達は後で職員室に来るように。」

あっ……これ終わった。

いつの間にか蒸し暑かったはずの身体は背筋が凍るように涼しくなっていた。

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