第27話

下層に降り立ったところで盛大な出迎えを受けた。

ガトリングガンの爆音と共に襲来する弾丸の壁。

魔術を修めた者でもここまでの密度で迫る物理的な攻撃では手も足も出ずに挽き肉にされるものも少なくはない。

1番ポピュラーな対策としては物理慣性を無効化、もしくは軽減する魔術障壁を展開して無力化することだが、どうやら感覚的にこの弾丸にはそれを阻害する要因がある。


「久しぶりだよ……本当に。」


一式二番【三連】


両手で魔力弾を放つ。

魔術障壁に干渉すると言うことは魔力に影響を受けると言うことでもある。

こちらは流石に相手程の連射速度は出ないが、1発の重みはこちらが勝っている。


数と質。


互いの優位性をぶつけ合う、闘争の前の肩慣らしとしては上等なものだ。


指の回転が上がる。

どうやら意識していなかったが指が鈍っていたらしく、徐々に昔の感覚を取り戻していく。

考えてみれば今の威力は前世にはなかった。

ショット連射で弾幕を作る戦法は若い頃にやり込んでいる。


もっとだ。

もっと速く、更に速く。


連射速度の上昇は意識の頭の回転速度の上昇にも繋がった。


未だ上がる。


そう確信していたが、相手が先に折れた。

ガトリングガンを持ちながら横に跳ぶのがゆっくりに見えた。


情報処理速度が上がりすぎている。

集中力を落とさないとか。


戦闘において極限の集中力を維持する事は難しい。

集中力のむらは、拮抗する相手との闘争において致命的な隙になることも危機を脱する機会になることもある。

要は使い所を見極める事が肝要だ。

今は相手が打ち合いから逃げたことで追い撃ちする機会ではあるが、相手の顔が見たくなった。

眼に意識を集中し、魔力で視力を底上げすると、相手はメイドの服を着たゴーレムだった。

容姿は美しいの一言に尽きた。

それは激戦を想像させる破損部分を会わせても色褪せることはない。

顕著なのは顔だろう。

顔の偽装の右半分が吹き飛んでいる。

どんな相手と戦ったのだろうか。


わかることは、こいつはこの世界のものではないって事くらいか。


「俺はトール。しがない魔術使いだ。…お前の名前を聞いておこう。」

「……ナノリ名を聞かれてコタエヌハ御主人様のメイセイニ泥を塗ります。私はフェ……ム、イダイナル主に仕えてイマス。」

「なるほど。さぞ高名な錬金術師なのだろう。さて、そんな錬金術師のオートマタが何でこのダンジョンのボスになっている?」

「…御主人様のモクテキノタメ。ワレワレハゼンレイヲトスだけです。」


持っていたガトリングガンを捨てた。

どうやら弾切れらしい。


「その目的とは何だ。」

「永遠の命。」

「…。」


どうして錬金術師や権力者はそういう方向に進むのかね…。


「キンセツセントウニ切り替え、排除行動を継続。サンプル採取は放棄。殲滅を最優先事項トスル。」


魔術に関係する人形の種類として、術者が魔術で操るマリオネット、制作者が作り出したゴーレム等があげられるが、こいつはゴーレムに属すると言って良い種類のオートマタと言うタイプの人形である。

ゴーレムとオートマタの最大の違いはエネルギー生成機関を内包しているかどうかであり、それを持たないゴーレムはダンジョン等の魔力を供給する仕組みにするか、一時的に使用する若しくは近くにいて魔力を供給する事が必要となる。

一方、オートマタは原則エネルギーを自身で生成し活動するため、ゴーレムよりも長期間の活動が可能となる。

それの最盛期だったのは中世イギリス。

錬金術師達の時代である。

彼等は各々が求めんとする知的欲求のため様々なものを作り出した。

その中にオートマタも含まれているが、現存していた物と比べても相手は遥かにレベルが高いことが伺えた。


知能指数的に前々世のアンドロイドや人工知能体に準ずる思考力がある。

いったい中身はどうなっている?

まぁ、そんなことよりも、久しぶりに両手を使わされたしな…突撃してくるなら少し遊んでやるか。


オートマタが腰を落とすとそのまま低空で迫ってくる。

製作者はかなり熱を込めてこれを作ったに違いない。


一式。


オートマタの構えていた拳にショットを当て腕を後ろから引かれるように倒した。


「!…魔法反応の検知ナシ。」

「別に魔法だけが神秘でない。それに言っただろう?俺は魔術使いと。」

「……。」


オートマタは攻撃を受けた右手を確認、数秒の思考を経て、再び一直線の突撃を行った。

その突撃に向けて俺の右手から放ったショットを微かな予備動作から推察し、回避軌道で距離を詰める。


「いいね。」


詰め将棋。

近距離のスペシャリストとやりあう時、近付けたら即死を突き付ける連中を相手に出鼻を挫き、進路を塞ぐ。

この一手は無数に枝分かれしていく選択肢を制限するもの。

次の一手は十手先の相手に膝を付かせるためのもの。

いかにダンジョンのボスであっても、オートマタの形をとる以上、その動きの束縛からは抜け出せない。


「2人とも。ダンジョンのボスはダンジョンから魔力を供給が行われている。これをどうにかして切断しない限り基本的に勝ち目はない。」


話ながらも相手の行動を制限するショットを撃ち込み続ける。


「方法は理論的に3つ。1つは無視してボスを討伐する。これはかなりの力量差がないと出来ない。1つはボスの核を破壊若しくは損傷させる事でボスとダンジョンのパスに流れる魔力量を増やしてパスを探しだして切断する。もう1つはダンジョンのコアを破壊する。これはそれ以降のダンジョンの操作が出来なくなるから結局は二択を選ぶことになる。」

「御主人様。」

「なんだ?」

「それだと、この間のオーガはどうなるのですか?」

「あいつの場合はダンジョンの一時的な魔力供給量を越える魔力量を使用させた。パスも魔力で出来ている。使いすぎれば、パスを薄くしてでも魔力を供給する仕組みを逆手にとった。今回も似た方法だが割り出しは済んだ。」


オートマタの限界を超えた挙動により、パスに流れる魔力が増大している。

そして、奴が行動を起こすパターンの中に一定の場所に戻っていた。


このダンジョンのパスの構造は定点式、挙動の遅いパワー型のボスに多い方式だ。


オートマタも何を狙われたか気が付き、俺とそのポイントの間に入って妨害を試みようとしている。


三式。


「悪いな。」


この弾は曲がる。


右手を振り上げ、スナップを効かせながら切り返して下げるタイミングで指を弾いた。

魔力弾はオートマタの頭上を通過するの一気に軌道を変えて地面へ撃ち込まれた。


トール

【魔術】ショット(一式・通常型(一番)・二番【三連】・三番【波紋】・四番【臨界】、二式・近接型(一番)・二番【波動】、三式・変異型(一番))

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)、BPベーシックカタログ(13話)、魔力エアジェットトライク(24話)、魔力エアジェットトライク専用コンテナ(24話)、魔力エアジェット専用ツナギ(24話)

【重要】森の胡桃(5話)、大鬼の涙(21話)

【称号】森の友(5話)、鬼殺し(21話)

【BP】6250

(東果ての森→ルミット→シラク→ダンジョン『小鬼の巣窟』→ナーク→トゥレ)


エイダ

【魔法】火魔法(レベル3)ファイアショット

【技能】弓術(レベル5)、蹴り(レベル8)(15話)、採取(レベル5)(16話)、清掃(レベル6)(16話)、房中(レベル6)(16話)、怪力(レベル8)(16話)、高速再生(レベル3)(20話)、軽業(レベル1)(25話)

【道具】短弓、矢筒、短剣、黒のチョーカー(12話)、魔力エアジェット専用ツナギ(24話)

【重要】隠者の誓い(12話)

【称号】忠誠を捧げしもの(12話)


エル(エリッサ)

【技能】運搬(レベル3)、サバイバル(レベル3)、陽動(レベル1)

【道具】左眼『眼石(原石)』(22話)、右腕『悪魔の腕』(22話)、右腎臓『人工臓器』(22話)、上行結腸『魔力貯蔵庫』(22話)、伸縮自在軽量スニーカー(24話)、馬鹿から始めるシリーズ賢者編(24話)

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