第26話

ゴーレムは単純にして奥が深い。

前世に世界屈指の人形使いとやりあったことがある。

その時、全ての手持ちの人形を潰した後に緊急時にゴーレムを使ってきた。

その出来は人形と比べれば雲泥の差であったが、何もないところから瞬間的に戦闘に耐えれるものを作り出し、それを使役して見せた技量に感服した俺は依頼内容だった奪われたアンティーク人形を返却することを条件に彼女を見逃した。

その後何度か会う機会があり、その時は互いの魔術について話をしたものだ。

こちらは基本的な魔術で、向こうは専門的な魔術だ。

他のものが聞き耳を立てても殆ど価値のない話だったが、2人にしてみれば貴重な時間だった。


「ゴーレムは自律人形とも呼ばれる。起動させたら設定された命令にしたがって動く代わりにそれ以外はできない。かといって広い範囲の命令では処理が追い付かない。だから、命令は端的なものを複数入れるのが普通だ。」


降りてきてから10分と少し、働いているゴーレムが襲ってくる気配はない。


「おそらく防衛の命令が入っていない。もしくは防衛機構をすっ飛ばして入ったせいか…。目標は祠だ、進むぞ。」


渓谷の奥には古びてはいるものの、きちんとした屋敷と地下水脈から涌き出てくる水源がある。


「構造的に屋敷の向こう側が最奥か。」


屋敷に近付くと岩に擬態していた大型のゴーレムが起動した。


一式二番【三連】


「エイダ、片方相手をしてみろ。」

「畏まりました。」


エイダは積極的に間合いを詰めていく。

先程手に入れた軽業のスキルも合間って軽快さを増しているようにも見える。


「危ない!!」


エルが叫ぶ。

エイダを押し潰そうとしたゴーレムの巨腕に押し潰されそうになる。


待っていたな。


オーガによって鍛えられた怪力と蹴りのスキル、そして何より高速再生で繰り返された身体能力の向上から放った蹴りによって、体積だけでも10倍を越えるゴーレムの攻撃を受け止めた。

それどころか、ゴーレムの腕はヒビが入りながら上方に弾き返され、仰向けに倒れた。

エイダは倒れたゴーレムに飛び乗ると頭部まで歩いていくと起き上がろうとするゴーレムの数回虫を踏みつけるように踏みつける。

複数の、しかも角度が違う蹴り衝撃は内部で合流し、ひびから損傷に変化した。

内部までひびが浸透した事でエイダの追撃を受けると頭部の大部分が割れてしまった。


一式


戻ってくるエイダの脇を魔力弾が通過する。


「ゴーレムを倒すのに核を狙うのは間違っていない。だが、ゴーレムの核が常に頭にあると考えない方がいい。」


このゴーレムは胸の中央に核があった。

ひねくれものが作ると違う場所に設定する事もあるが、核とは中心にあってこその核であり、そこからずれていれば動きもずれる。


「ありがとうございます。」


戻ってきたエイダは頭、胸、腹に大穴を空けて壁にもたれ掛かるこちら側のゴーレムに気が付いた。


「流石は御主人様です。」


エイダの顔が誇らんでいた。


「……。」

「エル、どうしたのかしら。それと、そろそろ御主人様から降りなさい。」

「は、はひっ!」


エルはエイダの珍しい顔に驚いていたいただけなのだが、エイダとしては何時までもくっついているエルが気に食わなかっただけだった。


「屋敷は…今は入らない方がいい、か。」


表層からは何も感じないが、地下から感じる気配には覚えがある。


悪霊。

それもかなりの数がいる。

祓うことは簡単だが、最初の目標を片付ける事にしよう。


屋敷の裏には目的の祠があった。

といっても大きさは成人男性が通れるくらいの大きさの門くらいはある。

しかし、先程のゴーレムは無理だろう。

そして、その扉は開いたままだ。


「気分が悪ければここで待っていてもいいぞ。」

「お戯れを。」

「わ、私は…」


あら、じゃぁ、自分の身は自分で守りなさいね。


エイダの視線は如実に言葉を含んでいた。


わかっていると思うけど、その体は御主人様の御慈悲でできていることを忘れないで頂戴、もちろんその体に傷を付けると言うことがどう言うことかわかっているわよね?


「つ、つ、つ、ついていきます!!」


3人で中に入るとそこには科学的な道具が並んでいた。


試験管にビーカー…簡単な実験道具は揃えてあるわけか。

屋敷の地下とこの道具一式…良い予感はしないな。


下層への階段は直ぐに見つかった。


「エイダ、エルを守れ。何がいるかわかったもんじゃない。」

「わかりました。」

「…ごくり。」


俺達は下層に降りた。


トール

【魔術】ショット(一式・通常型(一番)・二番【三連】・三番【波紋】・四番【臨界】、二式・近接型(一番)・二番【波動】)

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)、BPベーシックカタログ(13話)、魔力エアジェットトライク(24話)、魔力エアジェットトライク専用コンテナ(24話)、魔力エアジェット専用ツナギ(24話)

【重要】森の胡桃(5話)、大鬼の涙(21話)

【称号】森の友(5話)、鬼殺し(21話)

【BP】6250

(東果ての森→ルミット→シラク→ダンジョン『小鬼の巣窟』→ナーク→トゥレ)


エイダ

【魔法】火魔法(レベル3)ファイアショット

【技能】弓術(レベル5)、蹴り(レベル8)(15話)、採取(レベル5)(16話)、清掃(レベル6)(16話)、房中(レベル6)(16話)、怪力(レベル8)(16話)、高速再生(レベル3)(20話)、軽業(レベル1)(25話)

【道具】短弓、矢筒、短剣、黒のチョーカー(12話)、魔力エアジェット専用ツナギ(24話)

【重要】隠者の誓い(12話)

【称号】忠誠を捧げしもの(12話)


エル(エリッサ)

【技能】運搬(レベル3)、サバイバル(レベル3)、陽動(レベル1)

【道具】左眼『眼石(原石)』(22話)、右腕『悪魔の腕』(22話)、右腎臓『人工臓器』(22話)、上行結腸『魔力貯蔵庫』(22話)、伸縮自在軽量スニーカー(24話)、馬鹿から始めるシリーズ賢者編(24話)

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