第20話

ダンジョン内に人が居ても変遷は行われる。

地形も変わることがあるため、地震の前の初期微動が起こり始めたら、彼等は最寄りの階段を目刺し駆け込まなければならないのは、冒険者達の常識だった。

このダンジョンで積極的に手を加えたのは最初と最後の十層で、1から4層までは今までと同じ洞窟を模した造りはそのままに真ん中の層を削った分の面積を費やし、広大な階層に変革した。

冒険者達は今までよりも弱いとはいえ、広大な階層をモンスター倒しながら探索しなければならない。

しかも、変遷直後のため、詳細は地図はなく自分達の足で探し回らなければならず、精神的に疲労感からその時内部にいた冒険者達は脱出を選択した。


その翌日シラクに変わった噂が流れ始めた。


5階層でシルバースライムを見た。


それは一攫千金を夢見る冒険者に取って朗報以外にならず、そんな浅い層で出会えるわけがないと怪しむものは居ても、それが本当ならば他の冒険者に遅れを取ってはならないと小規模の集団が幾つか変遷したてのダンジョンに入って行く。

洞窟は複雑で数人が並んで通れる幅の道が枝分かれしている。

地面は実際の洞窟のように固いわけではなく、砂や土で比較的柔らかい。

広大な迷路の中で出口は1つ。

幸い、次の変遷までは目印が付けられるのでこぞって帰り道を記していく。

そして、運良く見付けた階段を下るとまたしても同じ様な洞窟が広がっている。

ゴブリンを倒しながら先に進むと次の階層も同じ風景だったが、確実に階層の面積が小さくなっているのを実感できた。

そして、4階層の奥。

5択を選ばされるように分かれた道の1本が5階層に繋がっていて、残りは途中から足元がスライムになっていてある程度の加重と時間が経過するとスライムが倒され、8階層まで落下する仕組みになっている。

めでたく5階層に辿り着けた冒険者は小フロアに1匹のシルバースライムが居るのを目にすることだろう。

魔法が通じず、物理攻撃も通りにくい相手に夢を掴むため全霊をかけた冒険者達はその成果を手にすることが出来た。

逆に不幸にも8階層に落ちてしまった冒険者達は大フロアで待ち構えるホブゴブリンとゴブリンの群れと遭遇することだろう。

彼等が生き残るためには上の階層へ逃げる事が最善だが、そこに辿り着くためには身動きを制限するゴブリンとゴブリン事冒険者を狩るホブゴブリンを回避しなければならない。

それを決死の思いで脱出した人間を7階層で待ち構えるのは一本道にいるトロールだった。

更なる宝を求めて5階層から何もない6階層を下り、7階層で一本道のトロールを見付けた冒険者達は静かに地上を目指す。

帰り道、残念ながらシルバースライムは居なかった。

帰り道は自分達が通って印を付けた通路を通って地上に帰還した冒険者のグループは酒場等のいたるところで金を取りながらダンジョンの中の話を始め、噂が事実だったことを知らしめるのだった。


「50人中40人が8階層で死亡。5名がそれ以外の場所でモンスターに倒され死亡。」

「………。」

「どうした。」

「…同じ人間なのに、どうして…。」


人の命を弄ぶのか。


「弄ぶ?見解の相違だ。」


このダンジョンの構成を変更する前に今までの成果を手にしていた。

それは情報がただの数字の嵐となって押し寄せてきて、処理して整然とした情報に整理されたのは間違いなく知識の書の影響だった。

その情報の中には死因や死者の年齢も含まれ、ここでは8割が成人前の若い子供が死んでいた。

俺のように高い収納能力をもつ冒険者は少ない。

そうするとこういった場所では安価な荷物持ちが重宝される。

その理由の1つとして、もし何らかのアクシデントで逃走する際に捨て石に使う事があった。

前世ではこういったモンスターよりも霊体が高魔力によって一時的に具現化して襲い掛かる場所が多く、そんな場所で人を犠牲にすれば死んでも尚、霊体の入れ物として使われてしまうためあり得ない事だった。

しかし、この世界では肉体もスライムを通してダンジョンの養分として吸収されるだけで、目に見えた実害はない。

これからしばらくの間は一時的にだが子供の死者は減ると予想している。


「命を弄ぶというのはな…。」


ディメンションバックから今回獲た戦利品の1つを使用する。


スキルオーブ『高速再生』


それをエイダの胸当たりに魔力と共に押し付けて割れる前に手を離す。

これで使った判定はエイダとなり、無理矢理スキルを取得させた。


「こう言うことを言うんだ。」


スキルは使わなければ育つことはない。

特にこのような怪我を負わないと発動しないものは尚更だ。

なら、丁度いい相手がいる。


「魔力は送ってやる。死ぬ気で鍛えてもらってこい。」


エイダをダンジョンボスに立ち向かわせた。


トール

【魔術】ショット(一式・通常型(一番)・二番【三連】・三番【波紋】・四番【臨界】、二式・近接型(一番)・二番【波動】)

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)、ポーション(8話)、BPベーシックカタログ(13話)

【重要】森の胡桃(5話)

【称号】森の友(5話)

【BP】14400

(東果ての森→ルミット→シラク→ダンジョン『小鬼の巣窟』)


エイダ

【魔法】火魔法(レベル3)ファイアショット

【技能】弓術(レベル5)、蹴り(レベル4→8)(15話)、採取(レベル4→5)(16話)、清掃(レベル6)(16話)、房中(レベル6)(16話)、怪力(レベル4→8)(16話)、高速再生(レベル1→3)(20話)

【道具】短弓、矢筒、短剣、黒のチョーカー(12話)

【重要】隠者の誓い(12話)

【称号】忠誠を捧げしもの(12話)

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