第19話

オーガの最期は呆気ないものだった。

ダンジョンから送り出される魔力が追い付かずに能力を発動することが出来なくなり、砕け散った下半身の骨が耐えきれずに膝を付いてしまった。

今まで回転を重視していた打撃のため、肩より上を狙えなかったが、頭が下がったことで軽く跳べば拳が届く。

拳を構えながら跳ぶとオーガと目があった。

人のような思考があるかは知らないが、その瞳には絶望に染まっており反撃する気配を感じることはなかった。


「ざっと2ラウンド途中ってところか、サンドバックにしては良く耐えたな。」


届いているかわからないが称賛を贈り、ディメンションバックへ収納した。

回復しないということはダンジョンからの魔力は途切れていると言うことだろう。


「ふぅーーー。」


猛り沈める前に今の感覚を良く覚えておけ。

切り換えたら直ぐにこの調子になれるように…そうだ、この状態で使うショットは真を付けよう。

そうすれば意識的に射てそうな気がする。


ゆっくりと収まっていく猛りを感じながら再び魔力を抑え込んだ。


「おい、もういいぞ。」

「…………。」


エイダは呆けているのか返事をしない。


一式。


消ゴムを30センチメートルの高さから落としたような衝撃がエイダの額に当たる。

予期せぬ痛みだった事と射たれた相手からエイダは目を開いたまま額や顔を首を確認し、自分が生存していることに安堵した。


「ちょっっ!」

「余波で怪我していたら治療が必要だろう。返事くらいしろ。」

「(゜д゜)……。」

「返事は?」

「…はい。」


美人が台無しな顔をしていたがようやく感情を取り戻し、オーガを倒したことで開いたフロアの奥へ向かう。

そこにあったのは俺の知識には無い代物だった。


【ダンジョンコア】


「…どう言うことだ。」


俺が知るダンジョンは地脈から吹き出した魔力によって建物や地形を変質されたものだ。

しかし、このダンジョンコアという代物は、地脈の噴出口にセットすることでダンジョンを形成する。

前世でここにあるものといえば魔力が液体化したエーテルの泉か、純粋な魔力の結晶体であるマナクリスタルのどちらかだった。


どちらでも良かったが、まさかどちらもないとは…。

どちらかを定期的に採取してアシトとの商いをしようと思っていたが…中々上手く行かないな。

とりあえず、こいつは売れるのか?


ディメンションバックへ収納しようと触れた。


拒否します。


「!?」


脳内に否定の意志が伝わってきた。

こいつには自我があるのか?


否定。

これはダンジョンコアに組み込まれた自己防衛機能の一環です。

振れている限りその人間とコミュニケーションを取ることが可能です。

ダンジョンコアはこの世界が正常に機能するために作られたものです。


ダンジョンコアは誰が作った。


特秘事項に該当するため答えられません。


では、所有者は誰だ。


貴方です。

ダンジョンコアは、ダンジョンの主を倒しダンジョンコアに触れたものを次の主として認めます。

ダンジョンマスターには禁止事項に関係しない部分の設定が可能となります。


要約すると、ダンジョンマスターが弄れるのはダンジョンの階層模様替え、各階層に振り分ける魔力の分量、ダンジョン内への入退出許可。

模様替えは各階層のモンスターの種類や内装を変更可能で魔力分量はその階層にどれだけの魔力を注ぐかを変更する。

ダンジョン内の入退出許可は指定した個人を入れないようにする事や選んだ人間を指定の階層に送ることが出来るというもの。


モンスターにゴブリンとスライムしかないのはこのダンジョンの正式名称が『小鬼の巣窟』だからでスライムは魔力で作られるモンスターのためどのダンジョンでも選ぶことが出来る。

そして、注意しなければならないのは、ダンジョンの主、ダンジョンボスは1度倒されるとゼロから育てる必要があり、その為にはダンジョン外からやって来た魂が必要と言うことだ。


なるほど。

ダンジョンのボスはダンジョンの要、こいつが弱ければ階層を降りきった奴等にこの権利を奪われると言うことか。


「エイダ、シルバースライムというのは一般的にどう言った扱いだ?」

「そりゃぁ、倒せればおいしいモンスターだけど…。」


だったら、決まりだ。

どの世界にも一攫千金を求める奴等はいる。

なら、その夢を掴む機会を提供してやればいい。


俺は階層の変更を設定していく。


変更を確定しますか?


その変更を確定すると再びダンジョンに変遷が発生した。


トール

【魔術】ショット(一式・通常型(一番)・二番【三連】・三番【波紋】・四番【臨界】、二式・近接型(一番)・二番【波動】)

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)、ポーション(8話)、BPベーシックカタログ(13話)

【重要】森の胡桃(5話)

【称号】森の友(5話)

【BP】14400

(東果ての森→ルミット→シラク→ダンジョン『小鬼の巣窟』)


エイダ

【魔法】火魔法(レベル3)ファイアショット

【技能】弓術(レベル5)、蹴り(レベル4)(15話)、採取(レベル4)(16話)、清掃(レベル6)(16話)、房中(レベル6)(16話)、怪力(レベル4)(16話)

【道具】短弓、矢筒、短剣、黒のチョーカー(12話)

【重要】隠者の誓い(12話)

【称号】忠誠を捧げしもの(12話)

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