第17話

結果的にダンジョンの探索時間の半分以上をエイダのスキル上げに使った形になったが、確認できたことがある。

1つはスキルの重ねがけが効果的な手法であること。

もう1つはスキルにも種類があって、戦闘面とそれ以外のものでは発動方式に違いがあるということ。


二十階層。


「あれは?」

「………トロール。」


背丈は3メートル程ある巨人のモンスター。

動きは鈍そうだが、その分タフネスとパワーを持ち合わせている。


一式。


「まだダメか。」

「前から思っているけど…それって全力?」

「いや、抑えずに射っているだけだ。」


外では周辺被害も考えて加減をしなければならない分、面倒な工程が増える。

ここではそれを省ける分ストレスが軽減されている。


「次行くぞ。手順は変えないからな。」

「……OK。」


ホブゴブリンは頭を垂れれば十分届く範囲の高さだったが、トロールはどう見ても届かない高さで、エイダにも何らかの工夫が必要となる。

一式の射撃でホブゴブリン同様に顔を押えるがそれでも高さは残る。

それでも、エイダは走り込み人間の腰くらいの高さにある膝を蹴りで破壊した。

今度は顔に加えて膝を押えて転がり回る。

そこに高さの障害は残っていなかった。


「崩しに1発、倒すのに3発。今回はきちんと効いて良かったな。」

「普通、トロール単独撃破を賛辞しない?」


効いていうのはもちろんスキルの事だ。

怪力は常時発動しているタイプのスキルで意識して筋力を発揮しようとすると本来よりも力が出るというものなのだが、蹴りは毎回発動する訳はなく、連続して使用するとスキルの成功率が低下し普通の蹴りになってしまう。

怪力が働いてはいるから普通の蹴りよりは強いが、蹴りを起点にスキルを重ねがけした時やり遥かに威力は下がっている。

スキルの成功率は連続使用とは別に体力や集中力が減衰している時も発動しない事がわかっている。

そうなるとエイダはもう1つの重ねがけの方を選ぶ。

通路を少し戻って広間でリポップしていないことを確認すると唇を合わせた。

房中と清掃の重ねがけは相手である俺の精神を回復させるのと、本人の体力や集中力を回復する効果があった。

本人にとっても利があるスキルだが、彼女からすると疲労が蓄積してくるとスキルの影響か、性的衝動が強くなって淫魔の如く相手を求めてしまうということだ。


「…どうした?」

「……もう少し。」


行為が終わっても足を絡め、腕を頭の後ろに回して、繋がったままその時間を楽しんでいるようにも見えるときがある。

離れたら離れたで清掃のスキルを使用するが最初よりも手間をかけているように思えた。


こいつ、サキュバスにでもクラスチェンジするのか?


モンスターの変化はスライムにも現れていた。

銅から銀にすなわち。


「メタルス…。」

「シルバースライム!?だ、だめ!あいつだけは、戦っちゃダ…。」


一式二番【三連】


「む?」

「…………あり得ない。シルバースライムに魔法が効かないはずなのに…。」

「今までで一番手応えがあったな。まだ他に居ないか?」

「ブロンズスライムが千体居るとして一匹しか居ない。もし仮に現れたら魔法は効かないし、従えたブロンズスライム達をけしかけてくる。両方ともダンジョンでしか見掛けないって聞いたけど、ダンジョンから溢れた時は町を消したって話…。」

「まぁ、そんなことはいい。何を落とした?」

「これ?石みたいだけど…。」

「石?」


天然石でも魔力を帯びるものはある。

しかし、それは眠っていた場所の地脈とその石の相性が良いから起こる偶然であり、そんなものは原石であっても億単位のやり取りがされる代物だ。


「…初めて見る。!」


アシトなら何かわかるかもしれない。

なら、ディメンションバックに入れて中身を問い合わせれば…。


久しぶりにスマホを取り出して中身を確認しようとするとそこに答えが表示されていた。


「…ミスリル。」

「ミスリルって、あの?」

「わかるのか?」

「詳しくはわからないけど、聖剣とかそういったものの材料てっいうのは聞いたことがある。」

「聖剣…か。それには特段興味はわかないが、特殊な金属っていうことはわかった。」


他にも今まで見てこなかったが、スキルオーブの中身もこれでわかっていた。

その事はエイダに秘密にしたのは言うまでもない。


トール

【魔術】ショット(一式・通常型(一番)・二番【三連】・三番【波紋】・四番【臨界】、二式・近接型(一番)・二番【波動】)

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)、ポーション(8話)、BPベーシックカタログ(13話)

【重要】森の胡桃(5話)

【称号】森の友(5話)

【BP】14400

(東果ての森→ルミット→シラク)


エイダ

【魔法】火魔法(レベル3)ファイアショット

【技能】弓術(レベル5)

【道具】短弓、矢筒、短剣、黒のチョーカー(12話)

【重要】隠者の誓い(12話)

【称号】忠誠を捧げしもの(12話)


【魔法】火魔法(レベル3)ファイアショット

【技能】弓術(レベル5)、蹴り(レベル2→4)(15話)、採取(レベル2→4)(16話)、清掃(レベル2→6)(16話)、房中(レベル2→6)(16話)、怪力(レベル2→4)(16話)

【道具】短弓、矢筒、短剣、黒のチョーカー(12話)

【重要】隠者の誓い(12話)

【称号】忠誠を捧げしもの(12話)

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