第16話

その後もブロンズスライム(仮名)は出現した。

割合的にゴブリン20体に対して1体位だろうか。

その度にエイダに使わせていたが、4つ目でストップがかかった。


「待って…気持ちが悪い…。」


スキルオーブを持った辺りで目眩のような症状を訴えた。

スキルオーブを回収して少し休んだら体調は回復した。


魂が外部からの干渉に許容範囲を越えたのか?

それともそのスキルオーブが悪かったのか?


いくら知識の書があっても俺が経験していないことや目に見えない事象だと万全の効果を発揮できない。

エイダが取得した4つのスキルは、採取、清掃、房中、怪力で全てレベル1。

エイダも聞いたことのないスキルもあった。


「十階層か…魔力の室が変わったな。」

「何でこんなポンポン降りれるかしらね…。」


潜り始めて半日程、変遷の絡みもあって途中からは冒険者の痕跡すらなかった。


「中々、律儀なダンジョンだ。」

「ホブゴブリンね…。」

「どうした?」

「奴等はね、ゴブリンがそのまま大きくなった訳じゃないのよ。凄く悪知恵が働いて残忍、外だとゴブリンを率いていることが多いみたいね。」

「そうか。」


一式。


「…余計な心配だったわね。」

「この程度なら、な。」


エイダの手際が前より良くなっているお陰か歩く速度が変わらずに潜る速度が速くなっている。

ダンジョンという異界でその場で待つというのはそれだけでストレスになることがある。

気張る必要もないが、怠慢な動きはグループ内の摩擦を作り出してしまうのだ。

ブロンズスライムもたまに出現した。

ゴブリンがいた階層よりも明らかに大きくなっていた。


一式二番【三連】


大きくなっただけで動きや強度に変わりはないのか?

次、見付けたら物理攻撃も試してみるか。


そう思っていたら直ぐに次のものと出会うことができた。


「えっ?」


エイダが声を上げた事でブロンズスライムがこちらに気が付いた。

ゲームとは違い、こちらを見て逃げ出すような事はない。

ブロンズスライムは力を溜めるように縮むと勢い良く体当たりをしかける。

俺もそれに拳を合わせた。


「ひ、非常識…。」


拳はスライムの体を貫通している。


「ダンジョンのスライムはソードイーターって言われるくらい硬い…筈なのよ。それを拳で、貫通?外のスライムだってそうはならないでしょ……。」


なぜか肩を落とすエイダを立たせて次へ進んだ。


「休憩を入れながら約8時間。このレベルだとしても上々の進み具合だ。」

「………それは喜ばしいことで。」


給水と食事を素早く済ませて、ディメンションバックから毛布代わりの布を取り出して、一休みすることにした。


「………。」

「………。」


いくらダンジョンとはいえ、今まで最低1メートルは距離を取って寝ていたエイダが肌が触れ合う距離にいた。


「……ねぇ。」

「なんだ。」

「私って貴方の所有物なのよね?」

「自分から支配してくれって言ってくる物好きには違いないな。」

「…なら、御主人様に奉仕するのは当然の事よね。」


そう言うとエイダは顔を俺の下半身の方に近付けたのだった。


「特別製の服で良かったな。」

「………。」


エイダは先程の行為を思い出しているのか、そっぽを向く形で顔を隠している。

俺はというとする前と比べて体の調子が良くなっていた。


これが房中のスキルか…いや、事後も掃除していたことを考えると清掃のスキルか?

良くわからないな。


汚れた服は脱ぐと直ぐに元通りになって匂いも失くなっていた。


行為を含めて3時間の休息は時間以上の回復をもたらした。

それとは別に、エイダが積極的に戦闘へ介入し始めた。

どうやら、何もしていないとさっきの事を思い出してしまうから、らしい。

さて、エイダは魔法を使うのではなく、スキルの方を使い始めた。

まずは、俺の牽制でホブゴブリンに一式を射ち込む。

威力的には拳くらいの石を顔面目掛けて投げ付けた程度で、痛みで顔を押さえるせいでエイダの接近を容易にさせる。

一気に接近したエイダは元々の柔軟性と合わせて味がホブゴブリンの顔面の高さまで届いた。

技能の蹴りと怪力が合わさり、細身の一撃でも首を折るような蹴りで足を振り抜く。

それで倒せればそれで良し、倒せなければ俺がとどめの一撃を射ち込む。

魔晶片の場所には個体差があるもののおおよその場所がわかったことでピンポイントで狙うとホブゴブリンが倒れる前にエイダが採取し、モンスターは倒れると同時にダンジョンへ還っていく。


「ぁんっ!ぁぁんっ!!」


これを覚えてから進行速度は停滞し、ダンジョンに入って72時間が経過した。


トール

【魔術】ショット(一式・通常型(一番)・二番【三連】・三番【波紋】・四番【臨界】、二式・近接型(一番)・二番【波動】)

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)、ポーション(8話)、BPベーシックカタログ(13話)

【重要】森の胡桃(5話)

【称号】森の友(5話)

【BP】14400

(東果ての森→ルミット→シラク)


エイダ

【魔法】火魔法(レベル3)ファイアショット

【技能】弓術(レベル5)、蹴り(レベル1→2)(15話)、採取(レベル1→2)(16話)、清掃(レベル1→2)(16話)、房中(レベル1→2)(16話)、怪力(レベル1→2)(16話)

【道具】短弓、矢筒、短剣、黒のチョーカー(12話)

【重要】隠者の誓い(12話)

【称号】忠誠を捧げしもの(12話)

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