第15話

前世におけるダンジョンの階級は国際規定で1級から10級に分類された。

規模、魔力濃度、出現物、出土物から判定されるが、国際基準が準用される前日本は丙、乙、甲、特の4段階で分類していた。

それを照らし合わせると10~8級が丙、7~5級が乙、4~2級が甲、1級が特となり日本には2つの特級ダンジョンが存在した。

内一つが、旧江戸城地下墳墓。

中は落武者を始めとするアンデットの巣窟であり、全勢力をもってしても定期的なガス抜きが関の山だった。

それを吹き出させないでいられたのは、武家と呼ばれる血筋が脈々と管理者を継承してきたからで、国家転覆を図るのであれば武家とその双璧を成す公家の当主を亡き者にできれば確実とも言われている。

もっとも、その当主を国で東西の四家、計八家が守護しており、その為に地脈の力を還元されている彼等は日本魔術界の頂点だった。


思い出に浸りすぎたようで、休んでいる冒険者達をすり抜けて三階層に付いていた。


「あれは何だ?」

「ゴブリン。」

「ほう。あれが噂に聞くゴブリンか。」

「珍しいの?」

「ああ。前いた所ではついに見ることはなかった。ちなみにやれるか。」

「もちろん。」


エイダの体内魔力が満ち溢れる。

そのエネルギーが体内から体外へ出る境界で魔力から魔法に変換され、手の平に上に火の玉が発生した。

その火種ともとれる火の玉は、エイダから注がれる魔力を燃料に火力を上げる。


「ファイアショット。」


発射までに起動から6秒。

分間で10発…は射てなさそうだ。

発射された火の玉は真っ直ぐにゴブリンを狙い、そのまま直撃した。

おおよそ、130km/h位の速度か。


「便利そうだがロスが大きい。」


一式。


火の玉を受けて壁に叩き付けられたゴブリンは胸に火傷を負っていたが死んではいなかった。


「…挽肉にするなら、最初からあなたがやればいいじゃない?」

「弓の腕前は中々だと思ってはいたんだが…魔法は今一つか。」

「くっ…ダンジョンのモンスターは外よりも強いのよ。そんなことも知らないの?」

「あれで…。」


自信はないが、このダンジョンは丙クラスのどれかで現状は丙の下、すなわち10級ダンジョンだと感じた。

前世では丙の下は、雑居ビル全体で悪霊が湧き出てくるレベル。

実態が無い分、面倒ではあるが魔術が普及した世界では学生でも比較的気軽に入れる程の敷居の高さだった。

そう判断したのは魔力濃度からで、いくら変遷が起きたからと言ってこうも濃度が低いとなると元から濃度は高くないと判断した。


「これはなんだ?」

「魔晶片(ましょうへん)。モンスターから取れる魔力の結晶片。魔法とかに反応するから慎重にしまって。」

「ふーん。」


ディメンションに送っておけば問題はないか。


魔晶片を回収された挽肉はダンジョンに溶けるように吸収された。


ふむ、こういうタイプか。

前世だと肉体を作るのにかなりの制限がかかっていたからか、ダンジョンで死ぬとその肉体を利用される事が大半で、かつての仲間と殺し合うこともざらに合った。

挽肉にしたのも、死体を利用させないためでもある。

死体を使用する時は腐敗しようとも五体が揃っているのが前提で、使用後に手足が吹き飛んでも術式を書き込む脳と支配するために必要な魔力を全身に巡らす心臓の両方が残っていれば止まることはない。


「…さっきのロスが多いってどう言うこと。」

「言ったままだ。」


俺の経験と知識の書の情報の両面から弾き出された答えにエイダは不服を感じているようだが、説明はできても実演できないのでは不満が溜まる一方だ。

その結果、俺がミンチにしたものの中からエイダが魔晶片を回収する分担が生まれた。


「スライム?」


銅色をしたボウリング玉位の生物がナメクジのように移動していた。

違いがあるとすれば、移動後に粘液が付いていない事とエスカレーター位の速度で這っていることだ。


倒してみれば何かわかるか。


一式を受けたスライムがプルプルと震えながらこちらを向いた。

つぶらな瞳がこちらを向くと天井を見上げながら弾けた。


「……。」


次見つけたら三連を使おう。


そんな些事は置いておいて、問題はスライムを倒した後の事だった。

スライムは最初何も落とさなかったが、ダンジョンに体が吸収されると箱が出現した。


前前世の国民的ゲームを混ぜ合わせたような感じだな。


箱を開けると中からは直径5センチ位の玉がが出てきた。


「スキルオーブ…初めて見た。」

「スキルオーブ?」

「どういう理屈かわからないけど、それ使うと技能が手に入るの。有用な技能なら貴族が金に糸目を付けずに購入するくらいよ。」

「ほう?…ほら。」


スキルオーブを投げまたした。


「ちょ、ちょっと。」

「使ってみろ。」

「あなたね、さっきの話聞いてた?」

「ああ聞いていた。だから使ってみろと言っている。」

「はぁ…、勿体ない気がしなくもないけど…。」


エイダがオーブをもって使う意思を送り込むと光を発しながらオーブが消えた。


なるほど、相手の承諾に合わせて魂に干渉する仕組みか。


「何の技能だったんだ?」

「蹴り。」

「…実用性がありそうだな。」


トール

【魔術】ショット(一式・通常型(一番)・二番【三連】・三番【波紋】・四番【臨界】、二式・近接型(一番)・二番【波動】)

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)、ポーション(8話)、BPベーシックカタログ(13話)

【重要】森の胡桃(5話)

【称号】森の友(5話)

【BP】14400

(東果ての森→ルミット→シラク)


エイダ

【魔法】火魔法(レベル3)ファイアショット

【技能】弓術(レベル5)、蹴り(レベル1)(15話)

【道具】短弓、矢筒、短剣、黒のチョーカー(12話)

【重要】隠者の誓い(12話)

【称号】忠誠を捧げしもの(12話)

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