第13話

「ふぅむ…。」

「Zzz…。」


シラクに向かう道すがら交代しながら夜を過ごしていた。

妖狐と賢獣でBPに余裕が出来たことで前から候補に上がっていた品物の購入を考えていた。


BPベーシックカタログ(100)


今のところ、ポイントが貯まって交換できる範囲でしか表示されないからな…。

かといって700しかなかったから、これを買うのを躊躇っていたが、今のポイントなら問題ないだろ。


「う…。」


カタログを見て自分の口を自分で塞いだ。

危うく叫びそうになったからだ。

そんなに分厚いカタログじゃない。

それでも心踊らせる代物ではある。


近代兵器から魔法じみた性能の武器、果てはドラゴンの卵?全くとんでもないラインナップだな。


交換をするしない、出来る出来ないは置いておいて、これだけの代物を用意しているところが恐ろしい。

それにこれはベーシック版、専門分野のものとなると更に闇が深そうだ。

朝、彼女が起きてからカタログを見せた。


「?」


考えてみればカラー印刷も写真もない時代にこれを見ても何が何だかわからないだろう。


「これはカタログというものだ。あ~…詳しい説明は省くが、衣類を新調するからそこから商品を選べ。」

「…見たことのない文字なのですが…。」

「じゃあ、このページからここまで気になったのがあったら教えろ。俺が読む。」


…あっ、これこの世界の住人に見せちゃダメな奴か。


「カタログとそこから得た情報は俺以外に他言することを禁じる。」


注文が決まるまで、ここから動かない事にした。


「これは?」

「紫蚕から取れた絹糸で織り上げられた絹で仕立てられたシャツ。」

「これは?」

「赤毛羊の毛を加工した伝統衣装。」

「これは?」

「それは…。」


先程から赤系統の色彩のものしか選んでいない。

もしかすると青系統は森を、黄系統は前の髪色を思い出すからとかそういう理由何だろうか。


「これは?」

「火竜の革を使ったシャツ。」

「火竜?」

「竜っていうのはドラゴン?」

「ド、ドラゴン!?」

「ドラゴンってこの世界にもいるのか?」

「お、おとぎ話に出てくるくらい…。えっ、本当に居るの?」

「さぁな。」


神様が居るんだ、今更ドラゴンが居ても驚きはしない。

まぁ、卵があるくらいだし、いるんだろう。


「決まったな。」


スマホで注文していると興味深そうにこちらを見ていた。


「これも他言無用だ。」


頷きながらも俺の操作が面白いのか見るのを止めなかった。


「さて、これで全部か。」


注文を終えたところでサイズの選択をしていないことに気が付いた。

計らなくてもぴったりのものが届くのだろうか?


「この度はブループラネットを御利用いただきありがとうございます。」


次元の揺らぎから女の仕立て屋が現れた。


「(ぴったりのものを)作りに来たか。」

「素材が貴重なものもありますので、出来る限りオーダーメイドを心掛けさせていただいております。」

「早速頼む。」

「承りました。」


仕立て屋は俺から採寸を開始した。


「トール様、ジャケットを作るご予定はございますか?」

「この世界の文化による。」

「畏まりました。」


俺が注文したものは、白いシャツに黒のパンツ、革靴。

上着を着れば前世の仕事着に近い衣装になる。


「完了いたしました。お次はお連れ様を計らせていただきます。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「か…。エイダ。」

「エイダ様。それでは採寸を始めさせていただきます。」


採寸から30分もしないうちに俺の分が仕上がった。


「私共のブランドはメンテナンスフリーを心掛けさせております。特別な衣装でない限り洗濯をしなくても汚れは脱衣することで洗浄され、ほつれや多少の破損は放置することで回復いたします。」

「ありがたい。クリーニングの心配はないな。」

「はい。それに加えてこのシャツには神域てて育てられた植生を使われており、魔力を吸収することで魔力膜を形成いたします。その効果で汚れは木地にたどり着く前に浮き上がり、液体であれば拭き取り、土であれば払うことで汚れることすらありません。パンツも同じ素材を使用し、気品ある黒へ染色したうえで、ストレッチが効くよう織っております。丈は踝より少し長めで走ったり飛んだりしても地肌が晒されることがないようにしております。靴ですが、磨かなくとも輝きが失われない加工がされており、中敷きには掛かる圧力で硬質度合いを変化させ、常に適切なフィット感を持ち続けられるようになっております。」

「ベルトまで付いているのか?」

「サービスでございます。」

「それはありがたい。」

「続いてエイダ様の代物ですが…少しよろしいでしょうか?」


ぼんっ。


煙と共に更衣室が出現した。


「こちらにどうぞ。」


2人は1時間程で更衣室から出てきた。


「お待たせいたしました。エイダ様のお使いになるシャツですが、ご要望のありましたとおり火に対する耐性が付加されております。ですが、燃えないというものでもありませんので御注意ください。」

「どれくらい持つ?」

「瞬間温度で1500度程でございます。」

「ちなみに素材はどんなものを使っている?」

「申し訳ありません。カタログ以上の事は申すことが出来ないのでございます。」

「わかった。つまらないことを聞いたな。続けてくれ。」

「はい。パンツですが、動物性の革を染色して加工しております。光沢はそこまで強くはございませんが、丈夫で運動機能を考慮した作りとなっております。ブーツはショートブーツをご用意いたしました。ソールが屋外でも足場とグリップし、安定感をもたらしてくれます。」

「完璧だ。」

「感謝の極みでございます。」


シャツ・メンズ(200BP)

パンツ(200BP)

革靴(100BP)

シャツ・レディース(400BP)

パンツ(100BP)

ショートブーツ(100BP)

サービス(ーーBP)


「またの御利用お待ちしております。」

「こちらこそ。よろしく頼む。」


カーラもとい、エイダの表情が少し赤かったのが気になった。

その日は半日しか移動できなかったが、服や靴の動きを確かめるには十分な距離だった。

その道中、名前を変えた理由を聞くことはなかった。


トール

【魔術】ショット(一式・通常型(一番)・二番【三連】・三番【波紋】・四番【臨界】、二式・近接型(一番)・二番【波動】)

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)、ポーション(8話)、BPベーシックカタログ(13話)

【重要】森の胡桃(5話)

【称号】森の友(5話)

【BP】15600-100-1100=14400

(東果ての森→ルミット)


エイダ

【魔法】火魔法(レベル3)ファイアショット

【技能】弓術(レベル5)

【道具】短弓、矢筒、短剣、黒のチョーカー(12話)

【重要】隠者の誓い(12話)

【称号】忠誠を捧げしもの(12話)

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