第10話
「埋める必要はあるか?」
「……え?」
「埋葬する必要あるか、と聞いたんだが?」
「…ここは、森と違って放置するとアンデットになる……けれども…。」
「頭と心臓を潰してもなるのか?」
「……知らないわよ…。」
大半の賊は既に死に絶えている。
生き残っているのは、途中で盾を離した賊1人だけだ。
腕を潰されたり、木片を受けた賊は今すぐ専門的な治療を受けなければ助かりはしない。
「さて…おい。」
「………。」
唯一の生き残りは自失している。
話は聞けそうにない。
「ん?こいつは…。」
どうやらは運が良い。
この盾持ちがこの集団のまとめ役だったようで、依頼文書に近い紙と多少の金を持っていた。
「せめて苦しまずに逝け。」
デコピンの要領で中指が額に触れる。
二式・二番【波動】
魔力の質を変えて振動のように魔力を連続して送り込む。
高速に送り込まれる魔力の波が脳内で反響し内側から破壊する。
男は鼻から一筋血を垂れ流して地面に横たわった。
「これくらいで良いか。」
街道から賊の死体を脇に退かした。
「…貴方、もしかして道に近い奴は加減していたの……。」
「そうだが?後片付けは簡単な方がいい。」
「………。」
カーラが何か言いたげだが、俺もこの世界にきちんとした人権があって、それを守らせる力が働いていればここまではしない。
道端の奴等は殆どスプラッタになってはいるが、片付けのために加減した道に近い奴等のお陰でかなり感覚を掴めてきた。
何しろ急激に出力が上がったのだ、いきなり軽自動車だったのがF1に代わったような感覚でこれまで十分に加減を確かめる機会がこなかった。
あの町の商業力でユニホームのようにここまで装備を整えようとすると…あの店か。
1件こいつらを手引きしたであろう店が思い当たった。
この文書はあの町を作る際に約束された内容を侵害している。
これが正しい両者の関係なら、エルフに届いてしまうと争いの火種になる筈だ。
「まぁ、意味はないか。」
「…何の話。」
「こちらの話だ。俺は明日あの町から出ていく。それだけは伝えておくぞ。」
そう言って1万G硬貨を3枚カーラに投げ渡した。
「何よ、これ。」
「餌代だ。」
彼女は最初意味をわかっていなかったが、これのために釣り出されたと気付き紅潮していた。
「じゃぁな、世話になった。」
俺の言葉がカーラに届いたかどうか、わからなかった。
その夜、回収した武器や道具の一覧を眺めていた。
どれも、これもBPにはならないか…。
ん…、あの方向は……。
エルフの村がある方向で夜なのに点のような灯りが見えた。
都会の喧騒では紛れ込んでしまうであろうその光からは異様な感じを受け取れる。
「確か、閉門時の入退は重罪だったな。」
俺は自分で苦笑しながら身支度を整えて窓から外へ出た。
無音で屋根から屋根へ飛び移る。
久しぶりの感覚に気持ちが高ぶった…もっとも、あの頃は雑居ビルを飛び移っていたが。
魔力の流れと筋肉の動作を連動させ、接地面に体重がかかったタイミングで魔力と筋力を発揮する。
言ってしまえば体内で魔力を燃焼させるような行為で、単発では優良な技術であったが魔力回路の流れのなかに肉体でいう疲労物質を溜め込んでしまい、長時間使うと一時的に魔術の行使が出来なくなる。
そのリスクを回避するために魔力回路の流れを加速させ、局所的な疲労を無くすことで安定した連続行使を可能にした。
老体の頃でも出来た技法だが、今は有り余る魔力量を生み出す魔力炉と人間の枠組みから外れた魔力回路がある。
すなわち、今必要なのは魔力の疲労物資の濃度等ではなく、魔力の精密なコントロールに他ならない。
これは、昼間に、練習した、意味があったな。
おおよそ1歩が10メートルの歩幅となっているが、それは家々の屋根に気を遣ったためであり、滑りやすい屋根の上は凍った水溜まりの上を普通の靴で飛ぼうとするのと似た感覚だ。
最後の屋根と防壁が見えた。
飛べ!!
軽やかに踏み切ると踵を尻にくっ付けるようにして高さを得た。
それは、そのまま防壁を越えて落下に切り替わると常人では死に到る高さと速度が出ていた。
その負荷をこの身体は易々と受け止め、次の動作の力に変えた。
さっきよりも1歩の歩幅が延びて今度は滞空姿勢に気を遣わねばならなくなったが、エルフの村に着く頃にはそれなりのか達になっていることだろう。
今、一刻も早く到着することだけを考えた。
トール
【魔術】ショット(一式・通常型、二式・近接型(一番)・二番【波動】)
【神具】神酒、知識の書、制約の剣
【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)、ポーション(8話)
【重要】森の胡桃(5話)
【称号】森の友(5話)
【BP】700
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