多世籍企業モスト

第8話

カーラは宿に行く前に冒険者組合で換金を済ませていた。

相手の盗賊は最近名前を上げてきたようで懸賞金がつり上がったばかりだと言う。

「首領が１０万G（グリンメル）、槍使いが５万G、他の奴等が１万G。」

「死んだ奴等はどうなる。」

「盗賊は一律半額。」

変わりに首だけで済むことを考えるとお手軽なのがも知れない。

「お前の取り分は、槍使いの５万、他のが１３万、首領は山分けで５万の…。」

「２３万。」

「そう、２３万。それでいいか？」

「俺はいいが、そっちはいいのか？」

カーラの取り分は１０人の半額分の５万と首領の５万の計１０万となる。

「問題ない。」

手短に組合で用を済ませるとカーラの使っている宿に向かった。

「あら、カーラさん。お早いお帰りでしたね。」

「女将、１人分追加してもらいたい。」

「あら、カーラさんのいい人？」

「…。」

「はいはい。おばさんの冗談くらい付き合ってよ。はい、うちは高いけどいいかしら？」

「おいくらです？」

「１泊５千Gよ。食事は朝夜。連泊するなら明日の朝教えてもらえると助かるわ。」

「わかりました。」

俺が空部屋の鍵を貰うと、カーラは１階の食堂に入った。

席は結構空いているが彼女は４人用のテーブルを選んだ。

「お前はこれからどうするんだ。」

「しばらくここに滞在してから次の行き先を考える。」

「そうか。」

「はい、お待ちどうさま。カウンターに上がっているパンとスープはある分お代わりできるからね。」

「どうも。」

固いパンじゃなきゃ考えるとするよ。

食事は固いパンとスープ、鳥の半身焼きのようなものだった。

エルフのところの飯よりはましだったが味気なかった。

食後は別料金で酒場になるようだが、それは遠慮して部屋に入った。

さて、せっかく違う世界の町に着ているのだ、微妙な雰囲気のエルフの村と違って色々と見るものはあるだろう。

前世は町を歩くのが好きで、旅先でも探索を好んでいた。

今世は前世では行きにくかった海外旅行のようなものだろう。

少し違うが異国情緒を満喫させて貰うとしよう。

期待に胸を膨らませながら、輝きの石を削り栄養を補給してから眠りについた。

町の探索にはカーラの監視の目がついた。

町人に気付かれていないようだが、そちらが見ると言うことはこちらが見られていると感じる可能性があることを考慮した方がいい。

そんなことはさておき、昨日得た報酬で生活必需品を購入していく。

「甘い果物はあるか？」

「ん。」

「じゃぁ、それを貰おう。」

代金を払って１つ噛ってみる。

確かに甘い。

印象はリンゴや梨に近い、これならいけるか？

「残りも貰うよ。」

「ん。」

露店商は子供だったが、生きているのに目に光はない。

未来に絶望しているのだろうか、事実はわからないが中途半端に助けるのであれば、たいていは悲惨な結果にしかならないのならないのだから。

町の散策中に薬屋を見付けた。

だが、品揃えは良くない。

「いらっしゃい…と言いたいところだがあいにくと物がなくてね。出直してくんな。」

「それはどうして？」

「どうもこうも薬の材料が無くて商売上がったりさ。他の薬屋も似たようなもんだろうよ。」

「それは災難だったな。」

「…なぁ、あんた。森でとれた薬草とか持っていたりしないかい？あったら言い値で買い取るよ。」

「あるが？」

「そうだよねぇ…専門の奴等が探してもないんだから……えっ？」

「何がいるんだ？」

薬師が要求してきたのは薬草、木の実が数種、椎茸大きくしてかさの色を少し明るくしたようなキノコだった。

「お～っ！！」

「それで、言い値だったか。」

「…。」

「条件によっては適正値でいい。」

「本当かい！？」

「条件を飲むならな。」

「い、言ってごらん。」

「１つ、これを俺から買ったと言わないこと。１つ、１回でいい、薬の作成する様子を俺に見せること。この２つだ。」

「…２つ目はいいとして、１つ目はどうしてだい？」

「下手に風潮されてこき使われたくないだけだ。安心してくれ、もし守られなかったとしてもあんたに２度と提供しないだけの話だ。」

「どうやって言ったかどうかを判断するんだい。」

「ここには俺達しかいないだろ。なら、ばれればあんたが言った以外にあり得ないのさ。」

「…信用無いのかねぇ。」

「初対面だ、当然だろう。それで、いるのか？入らないのか？」

「もちろん、買わせてもらうよ。」

作成風景は薬草や木の実をすり潰し、キノコを細かく刻んで定められた分量を容器に入れる。

そこにおそらく精製水なのだろう、水を入れて台の上に置き、薬師が魔力を使って何かしていた。

「今のは？」

「製薬のスキルさ。道具や材料を集めてもこれがないと薬は出来ないからね。後は一晩寝かせてやれば完成だよ。」

「そいつは良かったな。」

「こいつはサービスさ。」

「ほう？気前がいいな。」

「おうさ。何せエルフに頼んだ用な品質だったからね。高品質な原液が作れればそれだけ割れる分量も増えるのさ。」

「それは良かったな。」

「その飲み薬は１月は持つよ。使えなくなってくると液体に濁りが出るから廃棄してくんな。もし、濁っていたものを持ってきたら瓶の分はまけてやるよ。」

「使わないことを祈っているよ。」

「へへっ、また着てくれねぇ。」

「…ちなみにだが、さっきエルフといっていたが、それはこの町にいるエルフか？」

「おっと、いけねぇ。これは秘密だったね。」

「？、先程、見かけたんでな。気になっただけさ。」

「印狩りのカーラを見たのかい？いいかい、あんた。あの子は見た目もいいし、有能さね。でも、ちょっかいをかけたりとかしちゃいけないよ。」

「印狩り？」

「ああ、そうさ。あの子が始めてこの町に着た時からだったんだけど、ここら辺を締めていた悪党がいてね。そいつがカーラを捕まえようとしたのさ。大勢でかかったんだけど、悪党の眉間に一発矢を打ち込んで、そのまま首を落としたのさ。それ以来、あの子に絡んでその場の上役が生き残った試しは殆ど無いね。」

「印狩り、ね。」

「なにもしなきゃ、なにもされさ。」

「ああ、わかった。いい話を聞いたかもしれん…礼だ。」

「へへ、たまには昔話も役に立つもんだ。」

トール

【魔術】ショット（一式・通常型、二式・近接型）

【神具】神酒、知識の書、誓約の剣

【道具】ディメンションバック（4話）、スマホ（4話）、清水の水袋（6話）、輝きの石（6話）、ポーション（8話）

【重要】森の胡桃（5話）

【称号】森の友（5話）

【ＢＰ】７００