第7話

翌朝、カーラの案内で森を出た。

少し遠回りしたせいか、抜けた頃には昼頃になっている。


「1日でずいぶん戻るもんだ。」

「森の主が力を取り戻しつつあると言うことだ。」


道中、小動物を見かけることがあった。

警戒心が強いであろう生き物がこうも簡単に戻るというのも不思議なものである。


「これから向かう町はルミット。私はそこで冒険者の仕事をしている。」

「冒険者、か。」

「そうだ。」


それまで無口だったカーラが話し始めた。

元々、話好き何だろう。

我慢していたところでタガが弛んだ、と言ったところか。

そんな話好きの彼女の話を統合すると冒険者は依頼を受けて達成することで報酬を受け取る仕事であり、騎士や兵士への依頼が出来ない民衆のための組織のようだ。

危険を冒してまで依頼を達成する彼等は基本的に町にはなくてはならい存在のため、他の町に行かないように税金を安くされている。

しかし、それでは町がこぞって税金を下げてしまうため、この国が冒険者の税金を一律に設定し、徴税を委任したのが組合の発足の経緯だった。

組合は徴税機関であると共に仕事を斡旋する役割を果たす。

当然、住人の依頼だけでは多数の冒険者を維持できないため、町を管理する側からも依頼を出し、その達成された結果は地方で管理され、最終的には中央、国に集められる仕組みだ。


「これはなんだ?」

「また?」


俺は知識の書から役立ちそうな情報を見付けると適度に採取していた。

何せ、ディメンションバックのおかげで劣化の心配はない。

役に立つ日が来るまで眠っておいてもらうとする。


「夕方までには着けそうね。」

「何事なければな。」


森から出て直ぐに遠巻きに監視され始めた。

人間のようだが、明らかに手慣れているようだ。


「ここいらは盗賊も多い。精々気を付けることね。」


カーラの感知外で仲間に合図を送っている。

どうやら、狙いは俺ではないようだが、またしても巻き込まれる形になりそうだった。


「……かなりの数ね。」


カーラの感知範囲に入った頃には周囲を大人数で取り囲まれていた。

彼女にそれ程の価値があるのか、はたまた違う理由があるのか。

どちらにせよ、戦闘は避けられそうにない。


「森弓のカーラだな。」

「…退きなさい。」

「お前はいい金になる。おとなしくすれば痛い目に…。」


どさっ…。


弓は常に左手に持っていた。

そこから矢を構えて放つまで2秒を切った。

狙いは外れていたようだが、それを何らかの外力で補っている。


「……あぶねぇあぶねぇ…。話を聞いてなけりゃ死んでいたな。」


矢を受けた相手も額を金属で守っていた。

どうやら、カーラの癖を把握されているようだ。


「そちらのお客のようだ。俺は関係ないか?」

「!?」

「おっと、見られたからには運の尽きだ。おとなしくしていれば楽に殺してやる。」

「そうか。」


後ろからやってきた槍使いが勢い良く俺の背中目掛けて槍を突いきた。

振り向きながら右手を伸ばす。


「二式。」

「!?」


槍が右手に触れる寸前で止まった。

そのまま刃の根もと掴み、左の掌打で眉間を打ち抜いた。

男は鼻血を出しながら、空を見上げる形で倒れる。

それを見た男達に動揺が走るが、逃げようとはしない。


「腰が引けたぞ?」

「ひっ…。」


槍使い以外の男は良くて剣を持ち、それ以外は鉈やナイフを振り回していた。

そのどれもが、俺の身体に触れる前に止まってその間隙を突かれて戦闘不能に陥る。

俺が相手している連中はまだ再起の目はあるものの、カーラは容赦なく今度は防具がない場所を射貫いていた。


「何だ、あの男…。」


大半がやられたことで残っていた連中も遁走を開始する。


「ちっ…野郎共、ずらかれ!!」


リーダーはおそらくもっと早く逃げたかったのだろうが、カーラの放った矢の影響で立ちはしたものの動けずにいたのだろう。


「一式。」


距離にして40メートル。

射程範囲内だが、殺してしまわないか心配だった。


「うごっ!?」


リーダーは後ろから車に追突されたように前方に転がっていき、背中を押さえて悶絶していた。


「ふぅっ。」


魔力の残滓を消し、魔力が漏れもチェックしてからカーラに近寄る。


「知り合いか?」

「いいえ。」


カーラは馴れたもので射貫いた相手に止めを刺してから矢を回収していく。


「そのうち、巡回の騎士団が来るから、その前に生きている奴等をロープで縛っておいて。」


カーラが言った通り、馬に乗った兵士達ががやって来た。

彼等の代表がカーラと話を行い、倒した人数の確認を行って書類を作成していく。


「おい、応援を呼べ。」

「はっ。」


騎士の1人が短い杖を空に掲げるとそこから火の玉が飛び出し、空で弾けた。

それが数回、おそらく合図なのだろう俺達が町に向かう途中で荷車を引いた連中とすれ違った。


「あれは犯罪奴隷よ。…早くしないと門が閉まるわ。」


カーラに急かされ、アクシデントはあったものの完全に夜になる前にはルミットに到着した。

そこで町に始めて入る場合には入場税がかかることを知らされたが、どうするか考える前にカーラが払っていた。


トール

【魔術】ショット(一式・通常型、二式・近接型)

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)

【重要】森の胡桃(5話)

【称号】森の友(5話)

【BP】700

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