第6話

森の賢獣の信認

森の賢獣からの信頼の証

【称号】森の友


「貴方、何者なの。」

「そういえば、答えていなかったな。俺はトール。旅の武術家だ。」

「武術家?ま、まぁ、それはいいわ。私は森の民のカーラ。今回は森の主様を鎮めて貰ったことに感謝します。」

「まぁ、乗り掛かった船だったからな。」


カーラと俺は先程の凄惨な現場に戻ってきていた。


「?」


変だな…さっきまであった肉片が失くなっている。


「ああ、良かった…。妖精が戻ってきている。」

「妖精?」

「そう。妖精は森の生死を巡らせる。先程の血肉は新たな生命の礎になった。私は妖精が森から居なくなっていると聞いて調べに着ていた。」


バクテリアか何かか?


「私達エルフはその気配を感じることが出来る。……うん、前よりは少ないけどもちゃんと妖精は戻ってきている。」


妖精ねぇ…きっとこのもやっとしているのがそうなんだろうが…言わないでおくか。


「普通ならお前は人間。森の出口まで送って終わり。でも、森の主様のこともある。村まできてほしい。」


そういえば、エルフって言っていたか。

合計で100歳以上生きているとこういった感動は薄れるもんだな…。


最初の転生前はそういった本を読み漁っていた事もあり、それが原因で転生後に自分自身に落胆しそうになったこともある。


俺が内心で考え事をしていたこともあり、カーラの無言と相まって静寂のままエルフの村に到着した。


「カーラ!」


彼女の帰還を喜ぶ者と余所者を招き入れたことに怒る者に二分した。

総じて言うなら、歓迎はされていないようだ。


「トール、森の主様から貰ったものを出してほしい。」

「これか?」

「「「!!」」」


それを見せると村のエルフ達から受ける視線に変化があった。


「……森の主様が認めた人間なら仕方ない。」

「何故、人間なんぞに…。」

「トールは怒れる主様を鎮めた。主様はその礼としてそれを与えた。」

「怒れる主様…を?」

「鎮めた?」

「そう。トールのおかげで正気に戻り、今は英気を養っている。」

「森の主様が無事なら時が解決してくれるだろう。」

「客人、いや恩人。先程は失礼した。」


そのエルフが頭を下げると周りにいたエルフ達は散会していった。


「カーラ、恩人を連れて長のところへ行くのだ。」

「わかりました。ト、、恩人一緒に来てくれ。」


長の家は村の真ん中にあった。

長と呼ばれた現地人よりも落ち着きのある男だった。


「話しはわかりました。旅のお方、森の窮地を救っていただき感謝いたします。」

「気にしないでほしい。成り行きだったんだ。」

「それでも、助けていただいた事実は変わりません。本来でしたら盛大に感謝の宴をさせていただきたいのですが…。」

「本当にいいんだ。来るときに見てきたけど、動物が根こそぎやられているような感じなんだろう。先ずは自分達が食べることに心血を注ぐべきだ。」

「お心使い感謝します。でしたら、他に何か出来ることはございませんか?」

「そうだな…一晩村の一角で寝転がらせてほしいのと話を聞かせてもらいたい。何せずっと田舎に居て世間の事情というのがあまりわからん。」

「でしたら、空いている家がありますのでそちらをお使いください。誰か、空家に準備をしておくれ。さて、お話はどのようなことを?」

「そうだな…。」


たいていの知識はその場その場で知識の書から閃きのような形で対応できる。

だとすれば、ここは…。


「森の主について、教えてほしい。」

「わかりました。この森の主様はこの一帯を大主様から任されています。大体私より少し上の筈ですので…500年生きておられているようです。」

「普段から暴れることがあるのか?」

「いいえ。主は賢獣、知性ある獣。本来はあのようなことにはなりません。ですが、ここ最近の無理の異変で妖精達が居なくなったことで、森から力を得る事が出来なくなって飢餓に近い状態になったのでしょう。」

「大主というのは主とは違うのか?」

「はい。世界のどこかに居るとされ、妖精の上位種にあたる精霊から力を受けています。世界には森の大主様と同格の存在がもう4体居ると言われています。」

「なるほど。…最後にこの村から直近の人里を教えてほしい。」

「それでしたら、カーラ。」

「はっ。」

「明日、町に戻る時に恩人を案内して差し上げなさい。」

「承りました。」


コンコン。


「どうやら準備が出来たようです。村の者が案内いたしますので、ゆっくりとお休みください。」

「面倒をかける。」


俺は呼びにきた村人に案内されて長の家を出た。


「……カーラ。」

「はっ。」

「あの者は何者だ?」

「…わかりません。」

「…森の主様が信認を与えたからと言って、我等にとって健全な方とは限らない事はわかるな。」

「…はい。」

「…明日からあの者としばらく動きを共にせよ。もしこの隠れ里の事を話すようなら命に変えても討ち取るのだ。」

「………承服いたしました。」


空家はビジネスホテルとまでいかないが、寝るのには十分な広さと清潔感があった。

そこに入った後にしばらくして食事が届けられた。

保存食を質素に調理したような感じだった。


「………。」


歓迎されている感じはないな。

エルフは自尊心、プライドが高い。

容姿も平均すれば美男美女で不老長寿、そうすれば他の種族と色々軋轢があるのか。

ふむ、どの世界でも希少であるものには価値が付く、それは鉱物資源だろうと生き物であろう他人の所有物であろうと、だ。


「やめ、やめ。」


違うことを考えよう。

そうだ、ブループラネットの商品を見よう。


スマホを取り出して、今交換できるのを見ていく。


ほぉ…、中々のセンスだ。


この歳になるとこんな緊急時でも衣食住を意識してしまう。

緊急の事も考え、今交換すべきなのは…。


清水の水袋(100BP)

輝きの石(300BP)


清水の水袋は、1日100リットル湧く水袋で補水上限も100リットル。

見た目もそれっぽく見えるので問題はないだろう。

これがあれば水には困るまい。

輝きの石は、自然光(太陽光や月光等)を当てる事で人間に必要な成分を生成して蓄積し、表面を削ることで粉になる。

腹は膨れないが、栄養食のようなものだ。


こんなことをしているうちに夜は更けていった。


トール

【魔術】ショット(一式)

【神具】神酒、知識の書、制約の剣

【道具】ディメンションバック(4話)、スマホ(4話)、清水の水袋(6話)、輝きの石(6話)

【重要】森の胡桃(森の賢獣の信認)

【称号】森の友

【BP】700

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