第312話 水路 1
そうこうしながら歩いていくと、ふいに目の前が開けた。
ひんやりと湿気を含んだ風が頬を撫でる。
「川?」
目の前に広がる黒々とした水の世界に、
「川というよりも、湖と呼ぶべきでしょうな。豊富な湧き水が湧いているのです。ここからは水路をまいります」
「船で進むってことか?」
「ええ。この先は水上に作られた小さな街なのですよ」
小男が説明している間に、品のいい造りの無人の船が音もなく岸についた。
「どうぞお乗りください」
勧められ船に乗り込む。
物珍し気に船内を眺めまわしながら椅子に腰かける頃には、既に船は岸を離れていた。
「すごいなこれ!」
しばらくの間興奮に跳ねていた
「なんだ・・・これ?」
「どうした?」
呆然と固まっている
そこは、洞窟の天井同様、満点の星空を内包し息を飲むほど美しかった。
小さな宇宙のような底の無い情景が、透き通る
この圧巻の眺めには、4人ともすっかりやられてしまった。
しばらく黙ったまま水底の景色に見惚れていると、ぞっとするような黒々とした巨大な影がふいに水面近くを流れてくる。
何かぼんやりとした白いもやのようなものが、その黒い影のなかに浮かび上がってくるのが目に入り、
「まさか・・・」
徐々にはっきりと形を成したソレは、他でもない母の姿だった。
母親の表情の抜け落ちた青白い顔に、
「母さん!?」
「
「
「なんで・・・ここに」
母を呼ぶ
助けようと慌てて手を伸ばそうとした瞬間、水面に二つの小さな紅い光が鋭く煌めいた。
母親の顔は見る間に溶けて消え去り、巨大な影はぶるぶると震えながら水底へ落ちていった。
どうやら
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます