第293話 脚休め 10
これほどの金を持った男の連れなのだから、恐ろしいほどの力を持った者の一人くらい、護衛に加わっていることもあるのだろう。
無理やり気力を奮い起こし、小男は乾いた笑い声をたてた。
「お連れ様にはかないませんな。左様、あの小部屋には陣が張られております。ですが悪質なものではない。そこは私の顔をたて、信用してくださるとありがたいのですが。」
一体、この怪し過ぎる男のどの顔を立てれば、信用なんてできるっていうんだ!
一行のほとんどの者が胸の内でそう罵るなか、どうやら『
「まぁ、いいけどね。」
あまりにも長い下り階段は、過去に一度だけ通ったあの
「すまない。」
「気にするなって。こんなに薄暗い階段を延々と下りているんだ。そんな風になるのは、全然おかしなことじゃないよ。」
「さようでございます。むしろここまでの長さを一息に下りられる方はそうはいない。他のお客様方であれば、既に二度は休まれておいでのところだ。」
なさけなさに
三半規管がやたらと強く、乗り物に一切酔わないばかりか、暗闇でも平時と変わらず走り回ることができる特異体質の
ここまで音を上げることすらなかった
束の間足を止め休んでいると、
「なぁ。これ、帰りどうするんだ?随分深くまで下りてきちゃってさ。こんなにたくさん階段を上ったりしたら、さすがに俺、死んじゃうよ。」
どんな時でも、どんな場所でも変わることの無い、陽の光が差し込むようなあっけらかんとした
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