第292話 脚休め 9
「なるほどね。けどそれなら、
何かが酷く気に障ったのだろう。
答えなど分かり切っていながらあえて
「こちらにも、色々と込み入った事情があるのですよ。それにしても、陣・・・とは一体何のことをおっしゃっておられるのか。」
案の定、小男はさきほどよりも更に不機嫌に顔を歪ませ口ごもり、そのまま話を逸らそうとしている。
つまり、この男は冥府の深淵で好き勝手生きることができるほどの力を持ってはいないのだ。
とぼけた男の言葉に、
「
実は、これには
男は見破られたことにぎょっとして一瞬目を見開いた。
この陣を見破ることができるということは、つまりその者が自分を遥かに凌ぐ強大な力を有している者だという事実を赤裸々に示しているのだ。
しかも、これほど複雑に隠された陣を一瞬で見破れるような者など、未だかつて出会ったことどころか、聞いたことすらない。
冷たい汗が男の背をひやりと流れた。
ここまできてしまっては、いまさら「帰れ」というわけにもいかないではない。
この生き物を怒らせることだけはしてはならないのだ。
ほんのわずかな合間に、男は思考を振り絞り、ついに極めて自らに都合の良い答えを掴み上げた。
化け物じみた力を持つ者を引き込んでしまっていたことに驚愕はしたが、ただそれだけのことだ。
この者たちがここに害をなすものでなければ、結局のところ何の問題にもならない。
むしろこちら側に引き込んでしまえれば、今後これほど心強く、頼れる者はいないのではないか。
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