第287話 脚休め 4
意味深な表情にニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、
この男がこんなに楽しそうな
漠然とした不安を感じながら、
金を渡し団子を受け取ると、
「ねぇ、聞いてもいい?」
面をつけた得体の知れない若い男に柔らかく話しかけられ、女たちは戸惑った。
弱弱しい視線を交わししばし逡巡していたが、結局、右端の髪の長い女が答えることにしたようだ。
「なんなりと。」
従順な答えと細すぎる声は、酷く生々しい怯えを含んでおり、気の毒なほどだ。
女の異様な様子にはっきりと気づきながらも、
「品書きには見当たらないんだけど、ここで旨い鍋が食えると聞いたんだ。もらえるかな。」
その言葉を聞いた瞬間、女たちはビクリと身体を硬直させる。
「お客様。なにかございましたか。」
悪目立ちする
「おや。もしかして、
「お客様。申し訳ございませんが、どこか別の店と勘違いされているのでは?ここはただのお茶屋でございますゆえ、あるのは甘味や団子ばかり。ご覧の通り、鍋は扱っておりません。」
「・・・ふーん。それは残念だな。」
言いながら
醜く口元を歪ませ、いやらしい笑みを浮かべる。
わかりやすく揉み手のおまけつきで、今にもよだれをたらしそうな小男は、
「そうですねぇ。このままお帰りになるのもつまらないでしょうし・・・。こちらでできるもので良ければ、今から特別にご用意させていただきますが。」
「いや。それはさすがに悪いよ。店を勘違いしているのならこれから探すさ。心当たりがあれば教えてくれるかい?」
もったいぶった口ぶりの男に蒼がとぼけた様子で答えると、男は顔色を青くし、慌てて蒼の耳元に口を寄せた。
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