第252話 蒼の館 4
恐らく
囚われの石が黒の死に気づくことはできないのだから、当然、彼の元へ戻ることなどあるはずもなかったわけだ。
石は
しかし、そのこととは別に、黒にはどうしても腑に落ちないことがあった。
いぶかし気に目を細め、続きを口にする。
「ねぇ。この石が君の手元に渡ったとしても、保管した記憶を読み取れるのはボクだけなんだ。なぜ、
黒の問いかけに、
なんといっても、ほとんどの者にとって、この石は小指の先ほどの大きさのもの一つで、豪奢な館をどんと構えることができるほどの、大層な価値をもつ代物なのだから・・・・・・。
「
後半、少しばかり言い訳がましくなったが、
それなのに、黒は星をちりばめた瞳を逸らすことなく、
その目の強さにわずかな居心地の悪さを感じ、
「おい。ボクは金には困っていないし、
別段、黒は
ただ頭の中で、一体あの石は自分の過去にどれだけ触れていたのだろうかと、記憶を巡らせていたのだが・・・・・・。
分かりやすく拗ねてみせる
腹を抱えて笑い出したい衝動に駆られたが、全身をはしる激痛がそれを強く引き止めてくる。
必死に笑いをのみこんでいる黒を見つめながら、
「なんで笑うんだ。」
「・・・・・・君を馬鹿にしているわけじゃない。君が
「嬉しい?」
黒は困ったように小さく微笑むだけで、それ以上の答えを口にはしなかった。
「質問はそれだけだ。気を悪くしたのなら、笑ったことは謝る。」
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