第246話 誘導 2
現れた蟲は、先日人の子に寄生していた蟲に比べ、二回りほど小さかった。
だが、その姿の醜悪さと禍々しさ、そして放つ力は比ではない。
正体を暴かれたことに激怒しているのだろう。
黒々と靄のような気を放つその蟲は、金属をすり合わせるような耳障りな叫びをあげ、威嚇している。
身体中から毛のような極めて細い触手を無数に伸ばし、うごめく様は心胆を縮こまらせるほどの悪寒を感じさせた。
そんなものが身の内から引きずりだされたのだ。
あまりの衝撃に、
「もう、大丈夫。それにしても、白妙・・・・・・すごいな、君は。・・・ずいぶんと我慢強い。かなりの痛みがあっただろうに。」
目を細め小さく一つ息を吐くと、
それはまるで、そこに残る痛みをぬぐい取っているかのような仕草だ。
「
「・・・そんな。」
それもそのはずだ。
そんな彼女を思考誘導できるほどの蟲を操り、気づかれずにそれを仕込むことのできる人物がいるなど、考えたくもなかった。
なぜならそれを可能とするのは、彼女に近寄ることが出来る、力の強い者・・・つまり妖月などの中にいる可能性を考える必要があるからだ。
「随分と年代物の蟲だ。しかも、明確な意志をもってこちらを威嚇していた。あれの主は、かなりの力の持ち主だ。」
「昨日
口から吐き出された言葉とは裏腹に、
「ボクの言葉を本気にするなよ。冗談に決まっているんだから。・・・君との大切な時間を奪われたんだ。少しくらいの恨み言は許してやって。」
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