第215話 現在 >弔い 1
「
再び痛みが増してきたのだろう、
翡翠が、悶える白妙の背をすかさず撫でてやると、眉間に寄せられていた深いしわがほんの少し緩んだように見えた。
「
海神が
だがそれでも、あれほど情の深い
それほど強い白妙の
それを望むのは、あまりにも浅はかというものだろう。
言葉にしたことはなかったが、
白妙に寄り添う翡翠を見つめながら、久遠は海神と出会ったころの遠い記憶に想いを馳せた。
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二人は町の者を弔うため、
そこで目にした故郷の変わり果てた情景は、一切の容赦なく、二人の心を哀しみと絶望で
激流に流された町は全て泥水に埋もれた瓦礫と化し、見る影もない。
そこに、生きるものの気配を見つけることはできなかった・・・・・・。
海神は長く息をつき目を伏せると、胸の前で印を組んだ。
彼の色を失った唇が小さく何かをつぶやくと同時に、青白い指先が淡く輝きを帯びる。
近くで・・・・遠くで・・・・・一つ、また一つと泥水や瓦礫をかきわけながら、大きな塊が宙へと浮かびあがる。
人の形をしたそれらは、全てこの町の者の亡骸だった。
目の前に集まり始めた数知れない遺体を目にし、久遠と翡翠は、互いに顔を見合わせそして、海神をじっと見つめた。
「
「
久遠が
ちょうどその呼びかけに重なるようにして叫び声を上げた、
久遠がそこに見つけたのは・・・・・自らの、愛する母の姿だった。
久遠の母とさほど遠くない場所にいたのだろうか。
翡翠の父と母・・・・そして使用人たちの亡骸も同じ方面から次々と運ばれてくる。
死んでいるとは思えないほど生き生きとした姿のままの母の、冷たくなった手に触れ、久遠は深い哀しみに目を伏せた・・・・・。
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