第166話 再び 現在・・・
俺と勝と都古が光弘を背中に隠すと、
「前から気になっていた。・・・・君はなぜ、みーくんに・・・無色の術に、そんなにこだわる。・・・・・君の目的はなんだ。」
が、すぐに鋭い眼光を取り戻し、挑むような目で楓乃子を睨む。
「・・・・・・・闇、だ。俺は、闇だけの世界を望んでいる・・・・。」
「・・・・・なぜ。」
「俺には・・・」
何か口にしかけた宵闇だったが、舌打ちをして楓乃子を睨んだ。
「貴様は、あいつによく似ているな。お前のおかげで、余計な客が増えてしまったようだ。」
宵闇の視線の先を辿り振り返ると、そこには海神と蒼の姿があった。
「・・・・貴様っ。」
海神の姿を目にした途端、宵闇が凶悪な殺気をむき出しにし、黒い霧の塊を手のひらから撃った。
蒼が落ち着いた様子で海神をかばい前に出ると、腕を一振りし霧を祓う。
「おい。殺されたいのか。なぜ海神を襲う。」
「・・・・・。」
宵闇はギリリと音がするほど強く歯噛みし、なおも殺気立った目で海神を睨みつけていた。
「・・・待っているのか。白妙を。」
「貴様が・・・・その名を、口にするな!」
哀しみを湛えた瞳で苦し気につぶやいた海神の言葉に、宵闇はいら立ちを隠さない。
再び手のひらから禍々しい闇の塊を、海神に向かって容赦なく放った。
蒼は眉間に皺を寄せたまま、冷静に全ての攻撃を祓っていたが、海神の悲壮の表情に何かを感じているようで、攻撃に転じることはなかった。
赤黒い稲妻を伴って放たれる攻撃は雷光のように鋭く宙を裂き、2人を襲い続けている。
「今のうちに、身体に戻れ。」
宵闇の意識が完全に海神に向いているのを確認した楓乃子が、俺に耳打ちしてきた。
「君が斬ってくれたお陰で、この領域に穴が空いた。今なら簡単に出られるはずだ。・・・それに、ここは危ない。」
俺たちは視線を交わし、互いにうなずいた。
楓乃子の言う通り、俺もここはとても危険な気配を感じていた。
何か嫌な者に見つめられているような、ゾワリとしたぬめついた感覚が絡みついて離れないのだ。
「姉さんは?」
不安で表情を歪めながら、光弘は楓乃子に問いかけた。
楓乃子は嬉しそうに微笑むと、光弘の頭にそっと手を置いた。
「大丈夫。私は強いんだ・・・・・。ここが収まったらすぐにみーくんの元へ戻るから。・・・安心して。」
だが、光弘は楓乃子の手をつかみ、首を横に振った。
「俺が気づかないと思ってるのか?・・・・癒は酷く弱ってた。・・・・それに、俺はもう二度と、姉さんを置き去りにしない。」
楓乃子は目を見開いた。
「みーくん。宵闇は余計な事を言っていたけれど、私は最期まで心のままに生きることができたんだ。言霊を使って君と運命を入れ替えたのは、私の意思だよ。・・・・君は何も、気にする必要はないんだ。」
光弘は再び大きく頭を横に振ったが、楓乃子は有無を言わせない表情でそれを制した。
「いい子だから言う事を聞いて。もう二度と、失いたくないんだ。・・・・・それに、黒が酷く弱っている。今彼を守れるのは、みーくんだけだ。」
楓乃子は光弘の額に、自分の額を重ねた。
「私もすぐに戻るから。お願い・・・・彼の傍に、いてあげて。」
楓乃子の言葉に、光弘は力なく目を伏せた。
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