第118話 水穂の告白 1
蒼が言っていた通り、俺たちが
光弘の傍らには、先ほどの黒衣の青年が絵にかいたような美しさでたたずんでいる。
その姿を目にした
光弘はあっけにとられたままだったが、黒衣の青年と白妙たちの間にすかさず立ちふさがる。
「なぜ・・・・・貴様がここにいる。」
白妙の抑揚のない低い声音に、ゾワリと肌が粟立った。
久遠も油断のない視線を送り、今まで見たことがないほど黒衣の青年を警戒している。
「ごあいさつだな。久しぶりの再会だというのに。」
そう言うと、黒衣の青年は気だるげにため息をついた。
「お前たちに用は無い。彼のつきそいだ。僕に構う必要はない。」
光弘の肩の上では
白妙と久遠はそのまましばらく警戒をしていたが、長く息を吐き出し、手を降ろした。
「海神。一緒にいた男は?」
「蒼か。あいつは今真美とかいう
黒衣の青年は、あごに手をあて少し何か考えたようだったが、鼻から小さく息を吐くと意地悪そうな笑みを浮かべた。
「なるほど・・・。」
言いながら、彼は自らの懐に手を入れ繭を1つ取り出した。
『抜けろ』
彼の言葉に反応し、繭は薄く光を放つと中から一人の少女を吐き出した。
すかさず光弘が近寄り彼女が起き上がるのを手助けする。
その様子を黒衣の青年はあまり面白くなさそうな
光弘はそんな彼と視線を交わして困ったように笑いかけると、皆の方に向き直り真剣な表情で口を開いた。
「魂の治癒は済んでる。彼女から話を聞くべきだと思って連れてきたんだ。」
俺たちは顔を見合わせうなずいた。
丁度そのタイミングで、真美を送りに出ていた蒼が戻ってきた。
蒼と黒衣の青年は冷たく視線を絡ませると、無言のままどちらともなく目を逸らしてしまった。
俺は水穂に向かい、彼女が怖がらないよう、穏やかな口調で話しかけた。
「君は、どうしてこんなことをしたんだ?ショクとどうやってしりあった?奴はいったいなんなんだ?」
俺の問いかけに、水穂は肩を震わせ辺りを見回した。
「大丈夫だ。お前に害をなすものはここにはない。」
ちらりと黒衣の青年に目をやったあとで、白妙は優しく言った。
水穂は状況がつかめないながらも、霊体として動いていた時の記憶は残っているらしく、素直に語り始めた。
「こんなことをするつもりはなかったの。・・・ただ悲しくて、苦しくて、どうしても真美を許せなくて。」
そう言って水穂は涙を流しながら拳を強く握りしめた。
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