第54話 祭 2
「遅かったな。」
俺たちが到着すると、
「おう、ちょっくら
巨大な
辺りを見回していた俺は、近くに
「都古。光弘は?一緒じゃないのか?」
「お前1人か?」
「ああ。
「「・・・・・え?」」
俺と勝は同時に声をあげ、特設舞台の脇で歓声をあげて盛り上がっている餅つき集団を見た。
都古の言ったとおり、その輪の中心で汗を流しながら餅をペタンコペタンコとついているのは、まぎれもない光弘だった。
「マジか?」
勝は驚いた表情を見せたが、次の瞬間には「よっしゃー!」と叫んで、全速力で光弘の方へ駆けていった。
学校では自分をほとんど見せようとしない光弘。
行事などでも、自分から積極的に輪の中心に行くことはなかった。
しかし、一緒に過ごすうち、以外とイタズラ好きでお茶目な面があることが分かった。
剣道の時、勝と一緒に俺と都古の防具袋の中へおもちゃの蛇を仕込んで驚かせたり。
・・・・・・後で勝だけ都古にボコボコにされてたけど。
都古の誕生日。
本物のプレゼントを渡す前に偽物のプレゼント(再登場のおもちゃの蛇)を3人で渡して都古を驚かせたり。
・・・・・・やっぱり勝だけ見事な回し蹴りをくらってたっけ。都古ってホント、うらやましいくらい運動神経いいんだよなぁ。
お泊り会でホラー映画を見てる時には、トイレにいったふりをして、ビビってる勝の背後から耳元に息を吹きかけたりしてるし。
・・・・・・勝のやつ、ジュース鼻から出ちゃってたっけ。
さっきも水かけっこ、楽しそうだったもんな・・・・・。
影を感じることも多いけど、光弘自身は決して暗いタイプじゃないし。
なんだかんだで、実は結構ノリがいいんだよな。
口数が少ないだけで・・・・・。
に、しても・・・・・。
なんか、光弘。
今日変じゃないか。
楽しそうな光弘を見て、嬉しい反面、俺はかすかな不安を感じ始めていた。
なんだか生き急いでいるような、そんな印象を受けるのだ。
都古も違和感を感じているのか、難しい顔で光弘を見つめている。
とはいえ、やんややんやと掛け声をかける神妖たちの輪の中で、とびっきりの笑顔を見せる光弘と勝の姿に、俺と都古もじっとしていられなくなってきた。
「俺たちも行こう!」
「そうだな!」
俺は、心の片隅に漠然とした不安のかけらを押しやって、都古とともに歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます