第40話 おかしな駄菓子屋 2
まとわりつく夏の暑さはどこへいったのか、さらりとした心地良い風が
周囲は洞窟の壁に似た、凹凸のある滑らかな高い壁で囲われ、見上げた先には小さな丸い空があった。
綺麗だな。
空・・・だよな?
俺がそう思ったのは、この空が桜色と空色のグラデーションという、見たことのない色をしていたからだ。
足元一面に敷き詰められた、白いふわふわした綿のようなものが、ほんのり淡い緑色の光を放ち、時折湧き出る小さな光の粒が、ゆっくりと昇っていく。
これは夢なんだろうか。
俺たちは、顔を見合わせた。
だがしかし、無言で頬をつねった光弘が、すごく痛そうに顔をしかめたところをみると、どうやら夢ではないようだ。
「おい。大丈夫かよ?」
眉を寄せ頬をなでている光弘を勝が心配そうにのぞき込んだ。
光弘がコクコクとうなずいている。
俺たちは、狐に鼻をつままれた気分のまま、店の中に足を踏み入れた。
今通ってきた通路同様、この店の中も小さな外見を無視し、建物の中は馬鹿らしくなるほど広々と奥まで続いていた。
駄菓子屋のはずなのに、なぜか入口付近の棚には「産直野菜」と彫られた木札がかけられ、キャベツが山盛りで売られている。
店の中には所狭しと、見慣れた駄菓子から見たことがないものまで、数えきれない種類の駄菓子がならべられていた。
駄菓子の棚の奥には、大きな瓶がくり抜きの棚にきれいに並んでいる。
中に入っている、むき出しのマシュマロ、グミ、キャンディー、ジェリービーンズ、チョコレート、ガムなどが、店内の温かみのある不思議な色合いの光を反射して、色とりどりに輝いて見えた。
呆然としたまま光弘と一緒に店の中を見回している俺の耳に、奥の方から勝の興奮した声が聞こえてきた。
「おーい!すげえぞ!こっちはせんべえの山だ!」
せんべえ大好き男の勝は、もうこの場に順応したのか、目を輝かせてそこらじゅうを歩き回っている。
次から次へと大きな瓶の中身を確認しながら、あっという間に店の奥まで行ってしまった。
一番奥にある最後の棚にはひときわ大きい瓶が並べられ、中に入っているせんべえのサイズも、勝の顔がすっぽり余裕で隠れるほど巨大なものばかりだ。
勝が覗き込めば、勝の顔よりずっと大きな美味しそうなせんべいたちが瓶の中から覗き返してくる。
「うまそー・・・・・。」
勝は
うっとりしながら、瓶の中のせんべえを見つめる勝。・・・・・勝を見つめる美味しそうなせんべい。
見ているだけでもよだれが出てくる。
勝は瓶の中のせんべえに挨拶でもしているのか、次へ次へと瓶の中をうっとりした表情で覗いていき、ついに一番奥の列までたどり着いた。
瓶の中のせんべえをうっとりしながら見つめる勝。・・・・・勝を見つめる美味しそうなせんべい。
最後の瓶の中をうっとりと見つめる勝。・・・・・勝を見つめる美味しそうな
・・・・・?
「・・・・・!きゃーっ!」
店中に、まるで女子のような勝の悲鳴が響き渡った。
俺と光弘は慌てて勝の元へとかけつける。
よほど恐ろしいものを見たのか、勝が腰を抜かしてガタガタ震えながら宙を指さしていた。
「で・・・出た・・・・出た。やべえのが・・・・・。」
俺と光弘は勝を支え、息をのんで指さしている方を見た。
だがそこには何もいない。大きなせんべえの瓶があるだけだ。
「・・・・・何もいないぞ。」
俺の言葉に、光弘が同意しうなずいている。
すると急に店の中の明かりがチカチカと点滅をはじめた。
ウソ寒い風が吹き始め入口につるされた風鈴を激しくかきならす。
ふいに、店内の照明が全て消え、辺りが暗闇と沈黙に支配された。
何が起きてるんだ・・・・・。
背筋にゾクリと、冷たい汗が流れる。
勝がゴクリと生唾を飲み、俺と光弘に必死でしがみついてきた。
「・・・・・いらっしゃい。」
「っ!?」
「うわぁああああっ!」
「きゃーっ!」
突然耳元で聞こえた
尻もちをついたまま、恐る恐る声の主を見上げる。
再び
「ホヘェ・・・・・?」
勝の口から、実に間の抜けた声がはみ出してしまっている。
その時、店の奥の
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