第22話 小野寺 都古の物語>出会い 7

 夕日の中、真也しんやたち3人と別れた私は、はやる気持ちを抑え家路いえじを急いだ。

 家に着いた私を、父がすぐに白妙しろたえの元へと案内してくれる。


 「かなりの深手ふかでを負っていた。傷は完全になおしたが、だいぶ無茶な力の使い方をしたようだ。妖力の回復には時間がかかる。ひと月ほどは目覚めることができないだろう。」


 薄灯りの中静かに横たわる白妙は、美しく、とてもはかなく私の目に映った。


 父の言葉を聞きながら、私は深い眠りについている白妙の冷たい頬に、震える手でそっと触れた。

 父は私の頭を優しく撫でると、そっと戸を閉め出て行った。


 「白妙・・・・・。ごめん。」


 守ってくれているだけではない。


 どんなときも、私の良き友人として支えになってくれる白妙の存在は、真也しんやたちをいつわり続けている、私の心の重さや迷いをも一緒にになってくれているのだ。


 頬を伝う涙が零れ落ち、白妙の頬を濡らしていく。

 私は、白妙の白く滑らかな手を握りしめ、この美しく心優しい友人に深く深く感謝した。


*****************


 翌日。


 真也しんやの誘いで、私たちは放課後、真也の家に集まった。


 「みっつひっろくぅ~ん。見~つけた。」

 「捕まえちゃった~。」


 下校時、校門で待ち伏せをしていた真也としょうに腕を抑えられた光弘みつひろ

 その姿は私の目に、まるで悪者に連れていかれる、いたいけな少年にしか映らなかったが、光弘が怯えていないようなのでとりあえずは良しとしよう。


 はたからみると脅しているようにしか見えない雰囲気で、真也と勝は矢継ぎ早に光弘に声をかけている。


 「母ちゃん、光弘が来るって話したら、めちゃくちゃ張り切ってたから。来てやってくれよ。」


 笑顔の真也に念押しされたのが効いたのか、結局、光弘は時間通りに真也の家にやってきた。

 しかも手土産まで自分で用意してきたようだ。


 この日ばかりは、珍しく時間通りにやってきた勝。

 そんな勝を私と真也はわざとらしく大げさに拍手で迎える。

 何も知らない光弘が、きょとんとした表情で、私たちに合わせて小さく拍手しているのが、微笑ましい。


 早速真也の案内で、木漏れ日が降り注ぐ裏庭をみんなで歩く。

 日が暮れるまでの時間があまりにも短くて、私は少し冬を恨めしく思ってしまった。


 それからというもの、私たちは、まるでそれが自然なことであったかのように、当たり前に毎日を共に過ごすようになった。

 勝の父親が教えている剣道の道場へ光弘も通うことが決まり、私たちはさらに絆を深めていくことになったのだった。

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