第23話 都古の決意
あれからあっという間に1年以上が過ぎた。
お祭り騒ぎが大好きな
それなのにその初日。
遅刻が標準装備されている
真也と勝に気づかれないようすぐに
だがこちらから手を出そうにも、気配が微弱過ぎて秋津や鳳ですら黒蛇本体の潜む位置を捕らえることが叶わなかったのだ。
その後私は、両親や
だがその方法は、失敗した場合に失うものが、私にとってあまりにも大き過ぎた・・・・・。
もし成功しなければ・・・・・3人の記憶から、私は跡形もなく消えてしまうことになるのだ。
ちょうど5年前のあの時のように。
結局、私の決心がつかないでいるうちに時だけが流れ、ついに夏休み初日である今日となってしまったのだった。
真也と勝が、愛犬トマトのところに行ってしまうと、ほどなくして私は、光弘が眉間にしわを寄せ固まっていることに気がついた。
私がシャツの裾を引くと、光弘はハッとした表情でこちらを振り向いた。
光弘の瞳は怯えたように揺れ、顔色も紙のように白い。
今朝見たという悪夢のせいに違いなかった。
「・・・・・顔色が悪い。」
私が声をかけると、光弘は心配する私を気遣って、無理矢理笑顔を作ろうとした。
だがすぐに、苦しそうな表情にもどってしまう。
こんな光弘は見たことがなかった。
光弘は、眉間にしわをよせたまま、何かを確かめるようにゆっくりと私の髪に触れ、そしてためらいがちに指先で頬に触れた。
光弘の冷たく凍えた指先に、胸がズキリと痛む。
これは私のわがままだ。
3人を失いたくないという、私だけのわがままなんだ。
そのわがままのために、私は光弘に、いったい幾度の悪夢を重ねさせてしまったのだろう。
光弘にかける言葉をこんな私が持っているわけがなかった。
私は光弘の手の上から、そっと自分の手を重ね頬を寄せる。
光弘の目を見ることができない。
ごめんなさい。
私が臆病なばかりに、光弘をこんなにも傷つけた。
どれくらいそうしていただろうか。
やがて光弘は我に返って手を離すと、私の頭をぽんぽんなで、そのまま背を向けてしまった。
手のひらと頬に残る光弘のかすかなぬくもりを胸に、私はついに覚悟を決めた。
光弘を救えるのならば、もう迷わない。
たとえ私が3人との繋がりを全て断たれたとしても・・・・・・。
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