12話 「合流」

 リアンは先ほどもらった棒についていた、スイッチらしきものを押してみる。

 先端部分から、青白い光が出てきてリアンが驚く。

「な、何これ?」

 リアンはボタンから指を離し、すぐに光を消す。

 すると地面がまた、チカチカ点滅しだす。

「こっちって、ことですか?」

 リアンは指示に従って歩きだす。

「あの人……。いったい何者だったんだろう? でも、絶対どこかで会ったというか、見た記憶があるんだよなぁ……」

 リアンは先ほど見た、謎の肖像画の人物を思いだそうとするが、何も出てこない。

「う~ん」とうなりながら、リアンは新しい転移装置らしきゲートの前にやってくる。



 ドン! アモスが壁を蹴る。

「騙したわね! どこにもいないじゃないのよ!」

「アモス! 落ち着けって! もう少し探してみよう! こっちにも部屋があるから俺はこっちを!」

 アートンが隣の部屋を探しに向かう。

 部屋にはボロボロになったハーネロンが一匹いて、アートンに気にも留めることなくぼうっとしている。

「失礼! 邪魔するよ!」

 アートンが、部屋を見回してリアンの姿を探す。

 いっさい、襲いかかってこないハーネロンは、机に腰掛けて何かを作っているかのように腕を動かしていた。


 アモスは肩で息をする。

 そして、ある過去を思いだしてしまう。


「これは何?」

 アモスが尋ねる。

「これは、海の底に沈んでいるっていう遺跡だよ」

 幼女の声がそう教えてくれた。

「ふうん、そんなのがあるのね?」

「パパがこれを探してたんだって」

「そうなんだ。でもニカイドの技師が、どうしてそんなのを?」

「ここに、すごい技術があるんだって! ここからいくつもの技術を、蘇らせることができるかもしれないんだって」

 幼女が興奮気味に話す。


「そうなんだ……。そういえば、あの件どうだった?」

「お姉ちゃん?」

「う、うん……」と、珍しくモジモジしながらアモスがいう。

「パパと一緒にお食事したよ。アモスねぇちゃんも来たら良かったのにさ」

「あのふたりの邪魔しちゃ悪いし……」

「邪魔? そうなの?」


 ガン!

 アモスが、側にいたハーネロンをぶん殴る!

 吹っ飛ぶハーネロンが、地面でもがいている。

「嫌なことを思いだしたわ……。ここって、あの時話題に出た遺跡だったのね……」

 汚れた拳を服でぬぐいながら、アモスは吐き捨てる。

「お、おい、いきなりどうしたんだよ。身体触ってきたとかしたのか?」

 いきなりハーネロンに殴りかかったアモスに、アートンが驚いて尋ねる。

「何でもないわよ! さっさと行くわよ!」



 後方で光を感じる。

 光に包まれたリアンが、フラフラとそこから歩いて出てくる。

 するとリアンは、足下のドロに滑って転んでしまう。

「いてて、今度はどこに来たの? 便利だけど、一発で目的地に移動できないモノなんですか?」

 リアンが多少の不満を口にする。

 すると、「リアンくん!」という聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 アモスが、ズザー! っとリアンに飛びついてくる!

「リアンくん! これは本物よね!」

 アモスがうれしそうに、リアンに抱きつく。


「わあっ! えっ? アモス?」

 目を白黒させるリアン。

「無事だったのね! 良かったわ!」

 アモスがキスしようとするのを、リアンは必死にガードする。


「アモス! どうした!」

 遅れていたアートンが、その場にやってくる。

「って! リアン? どこから!」

 アートンもリアンの姿を確認する。

「って、何してるんだよ!」

 慌ててリアンに抱きついているアモスを、アートンはリアンから引きはがす。

「アートンさんも! 他のみんなは! 無事ですか!」

 リアンが開口一番、やってきたアートンに訊く。

「バークが、ヨーベルとミアリーを安全な場所に避難させているよ」


 ガン!

 アモスがアートンを蹴る!

「いったいなぁ!」

「感動の再会に、水を差すほうが悪いのよ!」

 アモスがアートンに吐き捨てる。

「リアンくん、とにかく脱出よ!」

 アモスが来た道を戻ろうとする。

「そっちじゃなくて、こっちのがいいよ!」

 リアンがそういうや、彼の目の前に立体の地図が現れる。

「な、何これ……」

 リアンの眼前に現れた謎の立方体を見て、アモスとアートンが驚く。

 立方体の地図に手を触れようとするが、素通りしたのでアートンはさらに驚く。


「ここに動く赤い点みっつは、きっとバークさんたちだと思います」

 リアンがいうと、地図上の赤いマークが点滅する。

「お前これ、どうなってる?」

 アートンが驚いたように訊いてくる。

「僕じゃないんです、ここの主が。とにかく、アモス、今は急ごう! この地図を信じていれば、きっと助かるはずです!」

 リアンが、力強いまなざしでそう断言する。

「わ、わかったわ。リアンくんを信じるから!」

 アモスが、リアンの手を引いて走りだす。

 アモスとリアンは、前方に見える光るゲートまで走る。

 するとアートンだけ残して、リアンとアモスがその場から消える。

「え?」

 ひとり取り残され、アートンが狼狽する。


「え? えっ? お~い!」

 アートンは困惑したように、その場をウロウロする。

 どこを探しても、リアンとアモスの姿が見えない。

 シュン! と、目の前にアモスとリアンが現れる。

「何してるんだよ! このグズ!」

 アモスがアートンを蹴り飛ばし、ゲートの内側に追いやる。

 それと同時に三人が消える。

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