4話 「不夜城、再び」
キタカイの港も大パニックになっていた!
「なんだあれは!」
「巨大な島なのか!」
口々に叫びながら、エンドールの兵士たちが驚いている。
突然海上に、巨大な建造物が出現してきたのだ!
港には警報が鳴り響き、先の誘拐事件の騒動と相まって、大混乱に陥っていた。
ライ・ローたちサルガも、その光景を見ていた。
「冗談でしょう……」
ライ・ローたちサルガが、唖然とする。
「親父さん、あれは、まさか?」
キネがライ・ローに話しかける。
「ええ、間違いないでしょうね。あれは、ティチュウジョ遺跡ですよ……」
ライ・ローが驚いたようにつぶやく。
「ティチュウジョって! そんなバカな!」
ツウィンが目の前の光景を、信じられないといった感じでそう怒鳴る。
「海底に沈んでいたっていう遺跡か……」
キネが腕を組んで考え込む。
「そういやおまえ、この海から何かを感じる、っていってたよな? あれの正体がこれってことか?」
ツウィンが、霊能力を持つというワンワンに尋ねる。
「うぐぐ……。確かに何かを感じていたんだが、あのデカブツから感じるのとは、どこか違う……」
懐から水晶玉を取りだし、何かを霊視するようなワンワン。
身につけた鳥の羽が、ワサワサと音を立てる。
「ここから感じるのは……。そうだな、怠惰……」
「怠惰? なんだそれは」
ツウィンがワンワンに尋ねる。
「怠惰とは、しなければいけないことを怠けるということだよ」
ワンワンがここで怠惰の意味を、真面目に語る。
「そんなのわかってるよ……」ツウィンが不満そう。
「頭の悪いコントはそこまでだ、連中に接触しにいくぞ!」
ツウィンにユーフがいう。
「なんだよ、今から本気で探す気か?」
「あったりまえだ!」
「日を改めてもいいんじゃないのか?」
ツウィンがユーフの提案に消極的。
「帝人商会の連中は神出鬼没だ! 見つけた時に探しだしておかないと、次に接触できるチャンスはいつになるかわからんぞ!」
ユーフがそういい、ツウィンを連れだそうとする。
散策していたシャッセとチヒロが、街で偶然悪名高い「帝人商会」の連中を見かけたというのだ。
個人的に因縁のあったユーフが、その連中と接触したがったのだ。
彼らは、「帝人商会の行くところに騒動あり」といわれるほど、トラブルメーカーとして有名だったのだ。
「ヤツらのことだ、きっとまた良からぬこと、企んでるに違いないだろ!」
ユーフが装備を整えながら、手下のシャッセとチヒロを先に車に向かわせる。
「じゃあ、ローの旦那! 少し出掛けてくるぜ! ツウィンもさっさと来い!」
ユーフの一味とツウィンが、部屋から慌ただしく出ていく。
「勝手にやらして、いいんですか?」
キネがライ・ローに訊く。
「大丈夫ですよ。ユーフくんのいう彼らには、わたしも以前から興味もありましたしね。ここで接点を持っておくのも悪くないでしょう」
「しかし、エンドールを縄張りにしていた帝人商会の連中が、どうして今になって、フォールにやってきたんでしょうね……」
キネが首をかしげる。
「その解答を得るためにも、ユーフくんには是非とも、彼らに接触してもらいたいものです」
ライ・ローは、先ほどの狂言誘拐騒動で得た情報をまとめながら、うれしそうにする。
ロイがすごい笑顔で、ティチュウジョ遺跡を眺めている。
その横で、ヒュードが困惑している。
「まさかあれも、あなたがたのやったことなんですか?」
ヒュードが、おそるおそるロイに尋ねてみる。
「まさか! 僕じゃないよ! しかし! すごいぞ! こんな楽しいことがあるなんて! 退屈なアムネークなんかに閉じこもっていたら、きっと体験できなかっただろうよ! ヒュードくん! きみもそう思うだろ?」
興奮気味に、ロイは双眼鏡で海中からせり上がってきた、巨大な遺跡を眺めながらいう。
「……まあ、驚きましたね」
ポツリとヒュードが応える。
(こいつが、やったわけではないのか……)
ヒュードは、ティチュウジョ遺跡の姿を眺めながらそう思う。
すぐそばで、猿のように騒いでいるロイの姿を横目で見る。
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