第13話「この世界について」
アドラステアは話が終わるとスッと立ち上がり、明るい声と表情で次の話を展開させた。
「君達はこれからも旅を続けるのだろう?だけれども今のような知識も護身術も無い状態は危険だ。特にこの荒野地帯ではね」
そう言って彼は茶色いマントを翻し、右手に持った大きな木の杖を、空中に絵を描くように動かした。
すると、広間の明かりがスッと暗くなり、アドラステアの正面に、何かが浮かび上がる。
それは、この世界の地図だった。私たちのいる荒野地帯がスラーノ王国の南東、一番右下に映し出され、赤い星が穿たれている。
「さあ、ミーナ、ジギル。これが何だか分かるね?そう、この世界の地図だ。そして君たちは今、この場所にいる」
アドラステアは振り返って、私達にそう説明する。「うん、それは分かるよ」「オイラもなんとなく」と、私達が答えると、彼は「オーケー、じゃあこのまま話を進めよう」と、白髪をふわりと揺らしながら頷いた。
「この荒野地帯も治安が悪いが、それはスラーノ王国内での話。この世界には『スラーノ』『サリファラ』『ティメタール』『ヴァルグ』『ペガ』という5つの国と、どの国にも属さない聖域『エデン』がある。そして今、隣国『ティメタール』と、極東の国『ヴァルグ』が、戦争の真っ最中だ。この二つの地域は、この荒野地帯以上に荒れている。君達には、というか、特にミーナ。君には最低限の、護身のための技を教えよう」
アドラステアはそう言って、また杖を振り上げる。
そうすると、映し出された地図がスーッと消え、広間に再び明かりが灯った。
「相変わらずマスターの魔法はカッケ〜な〜オイ」
「俺も魔法が使えりゃぁ、アイリスちゃんのハートをこう、ギュッと…。イテッ!ちょ、アイリスちゃん冗談だってば!」
周りのギルドメンバーのおじさんたちが、そんな話で盛り上がって、アイリスに引っ叩かれていた。
「魔法…」
私がそう呟くと、アドラステアは「そうだ」と言って、説明を続けた。
「君の中には魔力が眠っている。魔力は誰もが持っているわけではない、少し特別な力だ。使い方を間違えれば、簡単に他人も、自分も殺す。だから僕が君の力の、正しい使い方を教えよう」
彼は強い瞳でそう言ったが、その後すぐにクスリと笑って、
「だけどそれはまあ、明日にしようか」
と言った。
見れば、周りのギルドメンバーもクスクスと笑っている。何事かと不安になり、私は隣のジギルに目を向けた。
そして私も思わず吹き出してしまう。
ジギルは、腕を組んだ体制のまま、首をコックリコックリさせながら、大きな鼻提灯を出して眠っていた。
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