第7話「こんな奴に負けねぇ!」
「ジギルッッ!!」
私は傷口から血を噴き出して倒れているジギルに駆け寄ろうとした。
「待てミーナ!今はいかん!周りを見ろ!!」
「でもカラボ!だって、ジギルが!!」
カラボが私の腕を握って制止する。そんなことを言っている場合じゃない。私なんかがどうなろうが構わない、ジギルを助けなくちゃいけない。
魔道具〝アクエリアス〟を右手に握る盗賊団の親玉ガロンは「地属性の鱗は高く売れる」と言っていた。このままだとジギルが殺されて、鱗を剥がされてしまう。そんなことは絶対にさせない!
「ミーナ落ち着け!ジギルは大丈夫じゃで!血は流れたがあいつは魔物じゃで!一太刀浴びたくらいで死にはせん!ジギル!!立てるか!?」
カラボは私の腕をギュッと強く握り、大声で私に叫んだ。そして同様に声をかけられたジギルは、「ううう…、大丈夫だけど、痛ぇ、ちくしょう…」と、小さく声を上げた。
「ふん、流石は魔物と言ったところか、図々しくもしぶとい生命力だな」
「〝
「ああそうだとも。さっきも言っただろう…頭が悪いな、お前。…もういい、楽にしてやる」
いちいち見下したような喋り方をするガロンは、蔑む様な目でジギルを見つめ、アクエリアスを振り上げた。
「待ってダメ!やめて!」
私はつい叫んだ。しかしジギルは、
「ミーナ…!オイラはこんな奴に負けねぇ!」
と、傷口を押さえながらも不敵に笑って立ち上がった。なぜ笑っているのか、私には全く理解ができない。
「うらぁぁ!!」
ジギルはそう言って尻尾を振り回し、ガロンのサーベルによる直線的な太刀筋を逸らした。
ガロンは舌打ちをし、更に2、3擊目を繰り出すが、ジギルは軽い身のこなしでそれを避け、後ろに距離を取った。アクエリアスの通った太刀筋に青い光だけが余韻のように残っている。
「ミーナ、大丈夫じゃで。ワシを襲った時もそうだったように、リザードマンっちゅうのは、元々好戦的な戦闘種族なんじゃで。じゃからジギルもそう簡単にやられはせん。先ずは自分の身を守るんじゃで!」
カラボはそう言って、しつこく斬りつけてくる、顔に布を巻きつけた盗賊達に〝ズドォォン〟〝ズドォォォン〟とライフルを放った。
しかし。
「おっと…、弾切れじゃで」
「ええぇ!!?」
カラボのライフルの弾が切れてしまった。まだ盗賊達は10人くらいいる。ジギルは怪我をしているし、親玉のガロンもいる。相手はみんな武器を持っているのに対し、私達は鎧すら身につけていない。
「カラボ!どうするの!?」
「弾が切れればもう戦えん。もう戦えんが…ミーナ。もうワシらが戦う必要はないんじゃで」
なぜかカラボも二カッと歯を見せて笑っている。
「なんで!わかんないよ!どういうこと!?」
その瞬間。
〝ズドォォォン!〟
「ぐわぁぁ!!」
どこからか放たれた銃弾が、目の前の盗賊の肩を撃ち抜いた。
何もかもわからなくてパニックになっている私に、カラボは笑顔で答えた。
「ワシの銃声を聞きつけた〝ストッパー〟の仲間が、駆けつけて来てくれたんじゃで」
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