episode 4[ジャッキー乗っ取り大作戦]
「そもそもソラ。何故君がここに来るハメになってしまったのかを、先ずは説明する」
そう言って、死人さんは片隅にある椅子に腰掛け、私にも鉄製のテーブルを挟んで正面に座るよう促した。
私が席に着くと、キレイさんが紅茶を4人分用意し、死人さんの隣に座る。
ニーナさんは何か作業の途中のようで、死人さんが声をかけたが、「ん~~」と、答えにならない応えを返すだけで、席に着く様子はなかった。
「ニーナが少し話していたけれど、結論から話すと、今回の俺達のゲームは〝裏切り者さがし〟。クリア条件は裏切り者の発見、そして報復」
「報復って…」
物騒な言葉の響きに、私はたじろいだ。
「まあ、小指を切り落とすとか、命を奪うとか、そういう話じゃないよ。俺達に関する情報・記録の没収と、そいつの所有するアイテム・スキル等、データ財産の略奪だ」
「元々私達〝outlaw〟は、4人組の集団だったんですけれど、裏切られちゃいまして。ジャッキーちゃんっていう、あなたと同じ高校生の女の子ですわ。彼女、私達のギルドのIDとパスワードを、他の過激プレイヤー集団に流出しちゃったんですの。誰に唆されたのかしら…」
「おかげでこっちは相当の被害が出た。サイバー部隊も乗り込んできたくらいだ。今はこの非常用のギルドで難を逃れているけれど、もうあっちの本拠地には戻れないだろうな」
私は紅茶を啜りながら彼らの話を聞く。電脳空間でも飲食物はデータとして存在していて、これらは実態のある栄養物ではなく、完全に嗜好品として口に入れることができる。淹れてもらった紅茶はダージリンだろうか。スッキリとして飲みやすいものだった。
彼らの話を聞くと、つまり、そのジャッキーを捕らえる為に用意した強制ログインのトラップみたいなものに、何の因果か私が引っかかってしまった、色々とバレると面倒だから、すぐには返さないよ。という話らしい。
死人さんはこちらの表情を細かく見ているようで、私が話を理解して追いつくタイミングを見計らって、話の続きを聞かせてくれた。
「今回仕掛けたトラップの発動条件は、〝20日以上電脳空間にログインしていない16歳以上20歳以下の女性プレイヤー〟だ。ジャッキーは俺達の捜索を恐れて電脳空間へのログインを避けるだろうと踏んでの作戦だったが、電脳時代と呼ばれるこのご時世に君みたいなアブノーマルがまだ存在していることもわかった。だから次は作戦を変える。そこでソラ、君の出番だ」
「私の…出番…?」
ロクな事にはならないだろうとわかっているが、きっともう、私は彼らのペースに飲まれている。なんだか、やらなきゃならないという、使命感のようなモノが生まれていた。
「君には一度そのアバターをログアウトして、このIDのアバターに乗り換えてもらう」
「え、それってつまり…」
死人さんが見たことのないIDとパスワードの書かれた画面を卓上に表示させる。
それは、私の学校でもよく問題になる、どこからか個人情報が流出して、自分のアバターにログインできなくなったり、勝手にカードの精算をされたりする…。
「そう、君にはこれから〝ジャッキー〟のアバターを乗っ取ってもらうよ」
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