第4話「調査開始」
世間話も早々に切り上げて、私達はグラハム夫人の豪邸を後にした。あまり長々と話をしているとボロが出そうだったからだ。
応接室を出る前に、報酬の話になった。エリック氏は大分大袈裟な金額を提示して来たが、妻のジェシカ氏に止められていた。やはり初対面の胡散臭い探偵に金を払う事に不安があるのだろう。正直私も、まあ私というかマックスなのだが、経歴詐称をしている身で大それた金を貰う事に抵抗があったので、少し気が楽になった。
商談の結果、調査経費として小遣い程度の金額を後ほど頂く事になった。但し、私が見事犯人を見つけ出し、盗品を持ち主の元へ返す事が出来れば、その10倍の金額を支払う。一番間違いの無い、出来高での支払いだった。
「で、グレッグ。どうだいこの窃盗事件は。犯人の目星はついた?」
昼前の閑静な住宅街を並んで歩きながら、マックスが屈託無い笑みで私に問いかけてくる。
「バカを言うな。あんな短時間で推理が出来る訳ないだろう。大体、今回の紛失事件はあの家の人間が犯人ではない事を前提に推理を進めなければならない。つまり部外者の犯行だ。私が知っている〝部外者〟は…、今の所君しか居ないのだけれど」
「お、おいおい!僕を疑ってるのか!?証拠は何処にあるって言うんだよ!」
それは犯人の典型的な言い訳だ。本当にこの男が犯人なのではないだろうか…。
とは言え、あの家の人間が犯人ではない証拠もない。そう、現時点では何を保証する証拠もないのだ。私の手札はゼロだ。
果たして、ただの紛失なのか、外部の泥棒による金目当ての犯行か。それともやはり状況的に家族の犯行という線が色濃いのか、だとすれば動機は?家族の不仲、遺産相続…、いや、やっぱり真犯人は隣でヘラヘラしている私の友人か…?
考えれば考えるほどキリがない。
「ところでグレッグ。君はこれからどうする?一緒にどこかでランチでも食べるかい?」
現状容疑者の一人であるマックスからそんな提案が出るが、私はそれを断った。
「なんだい?もう動くのかい?」
「ああ、勿論」
そう言って私は歩く足を速めた。コートを羽織っていない為まだ少し寒かったが、だからこそだろうか、体の芯が燃えているのが分かる。なんだ、何だかんだ言って、私も乗り気じゃないか。
「早速、調査開始だ」
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