Ⅰ「私はスライム人間だからな」

 「いやいやいやありえないだろ!なんで生きてるんだよ!!てかお前誰だよ!!!」


 頭は真っ白のまま叫ぶ。パニックに陥った人間の典型的な例である。

 だがまぁ、その叫びがただの絶叫ではなくツッコミというのが俺、ヨシダリョウヘイ(34歳 未婚 職業:飲食店勤務)の魅力なんだと思う。いや思わない。


 「む、何故生きているか、などという問いはいささか初対面の人間には失礼ではないか」

 「いやそういうニュアンスじゃなくてだな!初対面にしろ親友にしろ、人間は五体が四散したら生きては行けないはずなんだよ!」

 「そんなふうに人を怒鳴りつけるようなお前は五体満足でも生きてはいけないな」

 「さらっと俺の存在を否定するな!」

 俺がさっき同じようなことを言ったことと、俺に親友がいないことはあえてスルー。


 「いやしかし、それがたとえ、例え話であろうとも、親友の五体がバラバラに、なんていえるお前はなかなかシビアな性格のようだな」

 「そんな詭弁に流される俺だと思うな!質問に答えろ!どうしてお前はそんな状態で生きていられるんだ!?」

 いやそれより俺とこのバラバラ男とで会話が成立していることのほうが問題だ。普通に考えて警察なり救急車なりに通報しろよ俺。

 あ、いや違うな、この様だと救急車は不必要か。


 とりあえず、実を言うと、こいつの正体を知りたいと思う自分がいた。まあ、この知的好奇心が後に大波乱と大混乱と大後悔を生むことになるのだが。


 「そりゃ、私はスライム人間だからな」


 いつの間にか全裸の人間の姿に戻っていた生首は、凛とした態度でそう言った。

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