ヒーロー

44

プロローグ「私を助けてくれ」

 人間の肉体が原形を留めていない姿というものを、見たことはあるだろうか。


 俺は偶然、いやもしかしたら必然だったのかもしれない。いずれにしろ依然として全然信じたくもないのだが、あたりに肉片を撒き散らかした、酷い臭い(おそらく腐敗臭)のする、足元に転がっている成人男性の頭部らしき物がなければ元の形が何か判別できないほどのそれと、こんな暑い日差しの中、遭遇した。してしまった。不覚にも。


 それとは6階建ての…いや、どんな姿でも人間だ。「それ」という指示語は相応しくないかもしれない。訂正しよう。


 とにかく。


 そいつとは6階建てのマンションの下にある、ひと目に付きづらいマンホールの上で出会った。


 しかしながらそいつは、

 決死の思いで地上24メートルから飛び降りた死体ではなく、

 必死の思いで地下3メートルから這い出てきた変態だった。


 変態は無表情な生首のまま


 「これは運命だ。私を助けてくれ」


 とかほざいてる間に、地球は滅亡の危機を迎えていた。

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