第164話 大団円
爆発で発生した火災は、倉庫の中を
人間に戻ったドウに命じられて、鳴倉は上着とズボンを差し出した。冷え切った空気に
ドウとあんずは、突然現れた男女と共に倉庫から姿を消した。大き目のパーカーを着たミニスカートの女と、遠目からでも判る高そうなコートを着た金髪の男だった。見たことのない二人だったが、この倉庫にいたことから推測するに、あの二人こそあんず
その小僧犬も死んだ。鳴倉が座っている場所からは見えないが、年代物の蒸気機関車の車輪にもたれ掛かった小僧犬の姿を見ていた。首がもげかけていたから、仮に生きていたとしても救う方法はない。人の死に目になど会いたくはないから、
冷酷だと
水浸しの床をぴちゃぴちゃと音を立てて、誰かが鳴倉に近づいて来る。敵も味方ももうこの倉庫にはいない。近づいてくる者がいるとしたら死神くらいだ。
音のする方向に顔を向けた。それだけで
「何やってんだよ鳴倉。ここはもうダメだ。
「せめて最後くらい、もう一度ソフィさんに会わせてくれませんか?」
「誰それ?何?頭打っちゃった?おれだよ鳴倉。あなたのお友達にして最高のボス、佐藤さんこと小僧犬
力無く手を振って追い払おうとしたが、しつこい亡霊はなかなか消えてくれない。
「小僧犬は死にましたよ。あっちに死体が転がってるはずです。見え
咳込んで吐き出した淡は墨のように黒かった。
「あのさ鳴倉。おれが死ぬ訳ないだろうがよ。おれが死ぬってことは、おれが死ぬってことだよ?バカかお前は」
小僧犬の小さな手が、ぺちぺちと音を立てて鳴倉の頬を叩く。だんだん本気で腹が立ってきた。
「あんたは死んだんだよ。ドウの一撃を喰らって、首が半分
喉がつぶれるのも構わず
どうして小僧犬はドウの左手を斬りつけたりしたのだろう。鋼のようなドウの腕をナイフなどで斬り落とせないのは解っていたはずだ。
「治癒能力。盗んだのか・・・・・」
大鎌を持った女が戦闘中に言っていた。攻撃の最中にはシールドは働かないと。ドウが拳を突き出した瞬間、ドウの左腕をナイフで切りつける。腕を切断する為などではない。ドウを傷をつけることによって自動で発動する
「在り得ない。あの一瞬でそこまで計算して動けるはずがない。仮にできたとしても、賭けにしたって危険すぎる」
「なにごちゃごちゃ言ってんだよ鳴倉。おれがお化けならお前の所なんかに現れたりしねぇよ。綺麗な女の子のとこに、アメフトのヘルメット
普通ではない。普通と呼ばれる状況など
「本当に、本物の佐藤さんですか?」
「どう見たっておれだろう。胸に
「そんな傷もともとありませんよね?それだけくだらないこと言えるのなら、多分本人なんでしょう」
「笑える話をしてやるよ鳴倉。残念だがおれもお前も死んじゃいねぇ。つまりゲームはまだまだ続くってことだ」
子供のように笑う小僧犬を見ているうちに、鳴倉の口元も
「これからどうします?」
「とりあえずあいつらの正体を暴く。それから奴らをぶっ殺す方法を見つける。あいつらちょっと人間
笑いの発作がぶり返し、二人して腹を抱えて笑った。人間舐めすぎ。確かにその通りだ。
「わかりました。手配します」
小僧犬の肩に掴まって立ち上がった。崩れ始めた倉庫の中を、出口に向けて歩き出す。
「
小僧犬に目を向けず、鳴倉は事務的に続けた。
「殺人鬼はアメフトのヘルメットではなくホッケーマスクを被っていて、ドリルじゃなく電動のこぎりで襲ってきます。それと日本映画の怨霊が現れるのはスマホの画面からではなく、テレビの画面からです」
「そうなの?それってどんな話だっけ?」
「ああ見えてホラー映画は奥が深いんです。自分で調べて下さい。」
まだ動く搬入用のエレベーターに乗り込んだ。音も無くエレベーターの扉が閉まり、惨劇の現場は鳴倉の視界から消えていった。
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