第160話 見切り
薄汚れたスーツを着た男がコントローラーを手渡す瞬間を
気配を完全に殺し、数メートルの距離まで接近し、怪物の意識がコントローラーに向いた瞬間を狙って、一気に力を解放して斬り込んだ。
チャオの持つ
怪物の脇を
小僧犬が用意したモニター席から、小僧犬とその一派が怪物と闘う様子を見物していた。最初から戦闘に加わりたかったが、ミカがそれを許可しなかった。不満を感じたが、その後の戦いを見る限りミカの判断が正しかったと認めざるを得ない。予備知識が無ければ、チャオも不覚を取っていたかもしれない。それほどまでにドウの力は圧倒的だった。
ドウの姿が消えていた。降り注ぐ放水が
「キャッ」
上から叩きつけてくる拳を、体をのけ反らせて
ラバーコーティングされた鉛でも叩いたような反動と共に、鎌の刃が
「キャッハーっ」
落下する先にはドウが待ち構えている。落下速度が増しているから、ドウの攻撃を受け流す術もない。カウンター攻撃を喰らえば、チャオの身体は
突き出されたドウの拳に、戦鎌を叩きつけた。生身の拳と、
ドウから距離を取り着地した。追撃は来ない。
「やっぱそうなんだ。攻撃の瞬間は防御できない。当たり?」
問い掛けたが返事は無かった。それもそのはずで、ドウはチャオが斬り落とした右手を口に咥えていた。
ドウが相手に触れようとする瞬間はシールドが働かない。モニター室で見た小僧犬一派とドウの戦いから、チャオはそう判断した。そうでなければドウの攻撃もまた、相手にヒットする直前にシールドによって弾かれてしまうからだ。あのシールドはおそらく、肉弾戦を得意とするドウの身体を遠距離攻撃から守る為に
ドウの身体が緑色の光に包まれた。頭から足先に向けて体表を流れるように
「うわっずるい。治っちゃうわけ?」
たった今チャオがつけた左手の傷が再生していく。それだけではない。斬り落とした右腕を切断面に押し付けると、肉と肉が
「凄いね。でもそれってチート過ぎない?そんなんで闘って楽しい訳?」
無言で
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