第110話 再契約
「で、結局あの子は見つかったの?」
問題はそこだった。怪物じみた男が暴れようが、小僧犬の兵隊が何人叩きのめされようがチャオには関係が無い。
「知らねぇ。野郎と一緒に消えた様子もないから、ひとりで逃げてんじゃねぇの?」
あっさりと小僧犬が答える。チャオの右手の爪が音を立てて伸びる。今しがたモニターの中で男が見せた暴力など
「イレギュラーな事態が発生したのは、自分の落ち度ではないと、そう言いたいのですか?」
会話にミカが割って入る。ラウンドグラスの奥にある小僧犬の視線がミカに
「
「ガキを監禁しとけっていうのがちびっ子姉ちゃんの依頼だ。化物に襲われるかもしれねぇなんて話は聞いちゃいねぇ」
「契約内容に重大な情報の
「俺たちみたいなやんちゃ集団に子守を頼むんだから、それなりの事情はあったんだろう。だがその辺を差し引いても、あいつは規格外だ。あんな奴を相手にするってんなら、お年玉の額を上げてもらわねぇとな」
「なるほど。ごもっともですね。だけど、あの男の出現は私にとっても想定外だったのでね。で、小僧犬くんだったっけ?きみは、金さえ払えばあの子を取り戻すことができると、そう言ってるのかい?」
「二日以内に見つけ出す。できなければうちのお母さんをあんたに差し出すよ。ちょっと
「
ミカの問いには答えず、小僧犬はジャケットの内側から一本のナイフを取り出した。
「こいつは、うちの兵隊があいつの
「こいつを使って、流行りのDNA鑑定ってやつをやってみた。面白くもなんともねぇ結果が出たぜ。こいつは間違いなく人間の血だそうだ。ゴリラでもなけりゃツチノコの血でもねぇ。しかもおれと同じB型だときてる」
舌なめずりをしながら小僧犬が
「相手が人間なら殺せる。つまりそういうことさ」
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