第40話 敵味方
「きみは、魔族か?」
耳元で声がした。驚いて肩越しに振り替えると、すぐ目の前に酔っ払い男がいた。きゃっと小さく叫ぶと、チャオは再び
だが酔っ払い男は追いついてきた。跳躍しながらも、チャオは男の動きを目で追っていた。男は左足で力強く地を蹴ると、三段跳びの要領でチャオの跳躍についてきていた。
「シィッ!」
魔族かという男の問いには答えず、長く伸ばした爪で男の喉を突いた。素手で人を殺すと体が血で汚れて嫌だったが、この男を生かしておくわけにはいかない。
必殺の間合いで放ったチャオの
猛烈な苦しみに、チャオは膝をついて腹の中のものを地べたにぶち
「貴様、殺してやる。絶対殺してやる」
口を拭いながら男を見上げた。これほどの屈辱は初めてで、目からは涙すら
「そうか。殺されるのは嫌だな。仕方ない。きみが死ね」
驚いて男を見た。男はチャオが投げたスローイングナイフの刃を、チャオの首筋に当てている。
殺すことには抵抗が無かったが、自分が殺されるのは想定外だった。油断したのだろうか?だとしたら何に油断したのか?自分と同等の力をも持つ人間などいないと高を
男に命乞いをしようとした瞬間、男がチャオから飛び退いた。男の立っていた地面から火柱が立ち昇る。
「これを
路地の先にミカが立っていた。黒いパーカーのフードを被り、丸縁の黒いサングラスを掛けていたが、間違いなくミカだった。
「きみ、赤羽の強盗を捕まえた人ですよね」
まるで知人だとでもいうような明るい口調で、ミカが男に声をかける。
「あの男の中にいたのは、あなたか」
男がチャオから離れたのを確認すると、ミカはチャオの傍らに寄り添った。
「どうにも不思議な縁だねぇ、きみとは。どうだろう?お互い名乗りあう気はないかい?」
「ない」
にべもない男の言葉に、ミカが首を
「冷たいですね。お友達になれるかもしれませんよ」
「人殺しが趣味の、ネズミを喰う女を飼ってる友達など欲しくはないな」
「なるほど。もっともですね」
ミカの手が、チャオの髪に触れた。優し気な手つきだったが、チャオは恐怖に震えた。
「じゃあ、今日のところはお開きにしませんか?また今度、別の機会に殺しあうってことで」
「二度と会いたくないんだがな。そうはいかないか?」
男の言葉にミカが
「ダメでしょうねぇ。あなた強すぎる。さっきの攻撃をどうして避けられたのですか?」
「発火魔法は、発動する前に空気の匂いが変わる。慣れてしまえば絶対に喰らわない。知らないのか?」
「そんなことを教えてくれる人はいませんでしたよ。勉強になります」
チャオを撫でていたミカの手が、激しくチャオの髪の毛を掴んだ。
「帰るぞ。馬鹿をしないよう監視をつけておいて正解だったよ」
髪を吊り上げられ、チャオはミカの隣に並んだ。ミカはすでに男に背を向けて歩き出している。
「お前、だいっ嫌いだ。べぇー」
チャオは男に向けて舌を出した。その顔を見て、男は
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