第37話 邪魔者
「どうしました?」
路地の入口で声がした。振り向くと
「なんでもないんです。すみません。行って下さい」
チャオの言葉を聞いた柿沼が何か言いたそうに口を開く。声を上げたら口を
「そうはいってもなぁ」
酔っているのか、足取りも定まらない様子で男が路地に入ってくる。場合によっては、このおせっかい野郎は本日二人目の犠牲者になる。
「血の匂いがする。誰か怪我をしているはずだ」
どういう嗅覚をしているのだろう。
逆光の中から現れたのはスーツ姿のサラリーマン
「何それ。ダサっ」
男の姿を見た
あろうことか男は、ネクタイを頭に巻いて右端から垂らしていた。黒革の安っぽいビジネスバッグを斜めに掛けたその姿は、日曜6時半のアニメでしか見たことがない、昭和の酔っ払いだった。
チャオの視線に気づき、男は
「やはり
男は頭に巻いたネクタイを取ると、微笑みながらチャオに近づいてきた。
「日本のサラリーマンは、酒を飲んだらああするんだと教えられた。そうするとみんな、道を開けてくれるんだとね」
意外にもまだ若い男だった。そしてチャオは、どこかでこの男を見たことがある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます