第18話 観察者
「つまんねーの」
チャオが
「ミカ、怒ってる?」
「怒ってなんかいませんよ。ただ、彼らから足が付くことはないのでしょうね?」
「それは絶対にないけれど、だけどあいつら、誰も殺してないよ」
「銃を使って人を殺すことに抵抗があったみたいですね。この国では銃を持つことが禁じられているから、その辺がネックになったのですね」
「せっかく、いい武器揃えてやったのに」
「出所は米軍ですか?」
「そっ。基地からちょろまかしてきたの」
目を伏せ、ミカは思案した。顔を上げると、チャオの姿が若い米兵に変わっていた。
「サー、イエッサー」
米兵がミカに敬礼する。
ミカは目を閉じ苦笑した。目を開けると、米兵はチャオに戻っていた。
「米軍を相手にするのは今後は控えて下さい。彼らは、わたしたちの存在に気づいている可能性がある」
ミカは再び視線を北に向けた。種を植え付けた
「解りましたか?」
チャオに目を向けると、チャオは再び米兵の姿に変わっていた。
「サー、イエッサー」
金髪で青い目をした若い米兵だった。
「なんでまたその姿になったのですか?」
「ミカはこういうのが好みかなって思って」
呆れて溜息をついた。
「わたしは男ですよ。理解していますか?」
口を
「だってぇ、ミカったら全然チャオのこと構ってくれないからさ。ひょっとしたらこっちが趣味かなって思ったんだもん」
本来の赤い瞳で、チャオがミカを見つめる。人間の男なら、チャオの容姿に
「冗談は
「ミカ、なんかアミバみたい」
「アミバって誰です?」
「いい。説明するの
小鹿のように駆け出すと、チャオは柵を飛び越え、その先に飛び降りていった。ミカが注意する暇も与えないほどの素早い動きだった。
「やれやれ」
何度目かの溜息をつき、ミカはドアに向かって歩き始めた。地上200メートルのビルの屋上から飛び降りる姿を目撃されたら、ちょっとした騒ぎになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます