第17話 誕生日
明奈はおそるおそる目を開いた。一度体験しているせいか、特殊閃光弾の音と閃光は、コンビニで受けたときほどの衝撃は感じられなかった。
目の前に、南条の顔があった。異性とこんなに顔を近づけたことは、今までに一度もない。南条の目は
「怪我はないか?」
南条の声に、不安が混じっていた。明奈の身を案じているのが伝わってきて、明奈は思わず泣きだしそうになった。
「どこか痛むのか?」
明奈の瞳に
「ううん、平気。平気だけど」
南条を見つめながら、明奈はしゃくりあげた。
「わたし、今日誕生日なの。誕生日なのにバイトなんて、嫌だなって思ってて。でも、他にやることもなくって」
自分が何を言っているのか良く解らなかった。泣き顔を南条に見られたくない一心で、明奈は無理やり笑顔を作った。
「小さな頃からね、誕生日っていいこと全然無いの、嫌なことばっかり」
「そうか。だがわたしにとって今日は、友が生まれてきてくれた素晴らしい日だ。祝う価値はある」
火の点いたオイルライターを明奈の前に
「願い事をするといい。願いは口に出さず、願ったら火を吹き消すんだ」
南条の目を見て
大量の水が明奈と南条の頭上から降り注いだ。
火の消えたオイルライターから目を逸らすと、到着した消防車のホースを使って奈緒が水を撒いていた。
「馬鹿じゃないの?引火したら
消防用のホースはポンプを起動しなければ普通の水道と水圧は変わらない。大型のホースで浴びせかけらた水はアスファルトを黒く塗らし、明奈と南条の頭上に幾つもの小さな虹を作った。
「ほらね。やっぱりいいことなんか全然ないでしょう?」
びしょ濡れになりながら、明奈は南条を見上げた。ひとしきり見つめあったあと、明奈と南条は同時に噴き出した。
「どうしたんだ?あいつら」
放水を止めた奈緒の隣に真庭が立っていた。腹を抱えて笑いあってる明奈と南条の姿を呆れ顔で眺めている。
手にしたホースを真庭の顔に向け、奈緒は手元の放水レバーを
「うわっ、なにしやがる」
顔面に水を浴びた真庭が尻餅をつく。ホースを上に向け、奈緒は自分も頭から水を被った。
「たぶんね。怖かったんじゃないかしら。あの子も、自称勇者様もね」
後続のサイレンが次々に聞こえてくる。事態は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます