第一章 勇者降臨
第7話 覚醒
「暑い」
叫ぶように声を上げると、勇者は上体を起こして目を開いた。
狭い
ここはどこだろうと自問する。ここで目を覚ます前は確か・・・・・。
ズキリと頭が痛む。思わずこめかみを押さえると、
ゆっくりと目を開き、もう一度部屋の中を見回した。やはり知らない部屋だった。それどころか、部屋の中は勇者が見たこともないような道具で埋めらつくされていた。どこか
ふらつく足で立ち上がり、
扉の先は
口をつけ、
頭から水を浴び、水の冷たさに
「井戸からくみ上げているわけではなさそうだな」
把手を捻っては止めることを繰り返してみる。水は
勇者は再び鼻をひくつかせた。山や森での生活では、匂いは生死を分ける
箱の中には
円筒の上部に、金属の輪を見つけた。指で摘まんでみると、輪の部分が動いた。上から輪を覗き込むように顔を近づけ、勇者は一気に輪を引き上げた。
プシュッという音と共に、円筒の一部が
「うおっ」
思わず声を上げ、その場に
「これは、酒か?」
口の
取り落とした円筒を掴むと、開いた穴に口をつけ、僅かに残った液体を一気に飲み干した。
「ぷは~っ」
勇者の知っている
ずぶ濡れになった顔を
「肉か」
薄いピンク色に染まった
立ち上がり、厨房を調べてみると、キッチンナイフのような刃物を見つけた。片刃で、勇者の知っているいかなるナイフとも
手にした刃物を持って戻り、肉塊の表面を
箱の中に入っていた品は多くは無かった。箱の中央の
床に一列に並べたそれら見たこともない食材ひとつずつを、勇者は口に入れてみた。
「トマトだな、これは」
赤いペーストは、トマトを
続いて口をつけた白色のペーストは不思議な味がした。
「何かにつけるとさらに美味いかもな」
一気飲みしたい欲望を
最後に残ったのは、チューブ状の容器に入った緑色の
「うっ!」
口に含んだ瞬間、
「水だ」
立ち上がり、シンクに頭を突っ込み水を貪り飲んだ。毒というよりは
台所の先に、
小部屋に入った途端、目の端に
「誰だ」
「おれか?」
勇者が呟くと鏡の中の男も口を動かした。
「これが俺?」
両手で自分の顔に触れ、形状を確かめた。触れ慣れた自分の顔とは異なる感触に驚いて、勇者は声にならない
「たいらだ・・・・・。顔が、ひらたくなっている」
鼻は低く、
「これはどういうことだ?わたしは、どうしてしまったんだ?」
鏡に向かって
「ここは、
トイレから出ると、勇者は
「牢獄ではなさそうだな」
窓の外の景色は、勇者が知っている巨大城塞都市の
物音に気付いて、窓の
「やあ、ごきげんよう」
警戒させないように声のトーンを上げて女に声を掛けた。女の目が勇者を捉えたのは一瞬だった。女はすぐに目を
「失礼な女性だな。それとも、言葉が通じないのか」
窓の下の
「ごきげよう。なぁきみ、ここはなんという街なんだ?」
若い男は無言で右手を上げ、勇者に向かって中指を立てて見せた。
「上?上に何かあるのか?」
上空を見上げたが、夏の白い雲以外は何も見えなかった。
「おい、きみ。上には何もないぞ」
勇者の声には答えず、若い男は路地の向こうに消えて行った。
「言葉を
「
部屋の中を
「おっといけない」
「我は光の勇者なり。我が手に掲げるこの剣に、光の
低い天井に向けて掲げたナイフが
勇者はナイフを胸の前に
「
「これなら大丈夫だ」
ナイフを腰帯に差し込むと、勇者は大きく息を吸い込んだ。
「よし。行くぞ」
玄関にあった黒の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます