第6話 消滅
「見事だ」
落とされた魔王の口が動いたが、声は
「人間ごときに、この首落とされようとはの。しかし・・・・・」
勇者は自分の体に浮かび上がる
「死んだことにすら気づかなんだか。
膝をついた勇者の体から、多量の血液が
首の無い魔王の体から、
「わしに
至極色の動く影は、勇者の体に
「
影が勇者の口に向かって
「喜べ。貴様は死ぬが、貴様の肉体は生き続けるのだ」
影が吸い込まれるたびに、勇者の傷が
「お前を倒すことは、できない」
苦し気に勇者が呟く。勇者の
「その通りだ。人間であるお前に、わしを
勇者の左目は、
「知っていたさ」
苦痛に
「
「
「そうでもない。人にとって
「相打ち?何を言っている。今まさに死にゆく貴様に、これ以上何ができる?」
「あなたを倒せないことは知っていたといってるだろう。だからわたしは・・・・・」
最後の力を
「倒せる相手を捜し出した」
大伽藍の真上、落下してきた巨大な縦穴を勇者は見上げた。強力な光が
「
「待たせたな、小僧。お前の望み通り、
黄金龍の巨大な口が開く。勇者の目を通して、魔王は龍の
魔王は支配している勇者の左手を、龍の顎の前に突き出した。冷凍魔法で
「バゴス・テリコス!」
魔法が
「おのれ」
魔力を集中し、左手を再生した。あとは再生した左手を突き出し、
「バゴス、」
魔法発動の直前、勇者の口が強い力で閉じられた。魔王の意思に逆らう勇者の右半身が口を閉じたのだ。
「バカが。お前も死ぬぞ。まだ間に合う。やつを止めろ!」
閉じた口からくぐもった声が
「止めろ、わしの力で、どんな願いでも
光の球から放たれたエネルギーは、光り輝くのレーザーとなって勇者の全身を
「貴様、貴様さえいなければ・・・・・」
「使命は果たせた。でも」
消えゆく肉体をよそに、自分の声が聞こえた。声帯すら消失した今、声が出るはずがないのに、呟きははっきりと聞こえた。
人々の期待と不安を一身に背負い、ただひたすら勇者への道を
だがそこには、何の
「わたしは、何をしたかったんだろう」
消滅する
「わたしは、本当に勇者になりたかったのか?本当に、この世界を救いたかったのか?」
勇者は微笑んだ。
「
消えゆく意識の中で、勇者は声を上げた。
「この次は、勇者などではなく、普通の、当たり前の普通の人間として、争いの無い世界に生きてみたいものだ」
力も名声もない、
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