第5話 黎明
魔王の攻撃魔法を喰らい、勇者の体は
瓦礫の中の巨大な岩に叩きつけられた勇者は、魔王からの
追撃が来ないことを確信した
勇者の左腕は、
魔王の口から
「ディメンションリッパー」
勇者は足を踏み出した。
魔王の後頭部に現れた巨大な眼球は、眠りに落ちるように閉じていった。脇腹から出現した二本の腕も、
円月輪十六夜を
魔王は老人を
勇者は地に落ちた有明を手にし、ふらつきながら魔王に近づいてくる。
「来い、勇者よ。その
魔王の前に立った勇者が、右手に持つ魔刀、玉鋼有明を魔王の首元に突き立てた。骨と皮で
「無駄だ。
勇者に魔王の言葉は通じていないようだった。ただ
「止めよ。これ以上の抵抗は見苦しいだけだ」
魔王は左手一本で勇者の首を
「これで最後だ。言い残すことがあれば聞いてやろう」
勇者の唇が
「
勇者の顔を耳に近づけると、息も
「昨日の
勇者の首に力を
「貴様、何を言っている?」
「
魔王の顔から笑みが消える。
「その答えがお前の最後の望みか?」
首を
「答えは知っている。魔王、あんたは食事を
誰に聞いたのかは知らないが、勇者の言うことは正しかった。生まれてこの方、魔王は
「人は、食事を摂る。生きる為に、毎日毎日、欠かさず、食事を摂るんだ」
残っている右手で
「ドントの実だ。飲めば生命力が
ドントの実の
「人は、生きる為に食べる。それが、知恵を生むんだ。保存すること。鮮度を保つ方法」
勇者の体から、僅かばかりの魔力反応を感じた。
「フロガ・ミクロン」
勇者が呟くと、
「魔法樹の実を、
勇者の赤く染まった右手の中には、ドントの実が握られていた。
「
勇者がドントの実を口の中に放り込み噛み砕くのと、魔王が勇者の首をへし折ったのはほどんど同時だった。魔王の右手は、勇者の
粉砕したはずの頸骨は
「貴様、これを狙っていたのか?」
魔王の問い掛けに、勇者は苦笑しながら首を横に振った。
「とんでもない。あなたがこれほでまでに強いとは思ってもいませんでした。ドントの実は保険。使う予定のないとっておきだったんです」
ドントの実は勇者の生命力を
魔王は掴んでいた勇者の首を
「最初からやり直したところで、結果は変わらぬ」
しわがれた老人の声で、魔王は勇者を
「わたしの手の打ちはすべて
「決着をつけましょう」
勇者の言葉が終わらないうちに、魔王が聖剣を
魔王の口から、
体をくの字に折り曲げながらも、地面に
「人間が」
口をついて出た言葉に、怒りが
魔王の
「無駄なことを。貴様に待つのは死あるのみよ」
勇者は立ち上がり、魔王と
「首だけは残す。後は
魔王の振るう聖剣が、
「円月輪十六夜、戻れ!」
勇者の右手に、金色に輝く十六夜が握られていた。
「眉月を投げた先に、有明が待っていたとはな。抜かったわ」
耳まで
「つくづく悪運の強い男よ。感心する。だが」
聖剣が次々と勇者に叩き付けれられる。魔王の攻撃は繰り返すたびに角度を変え、速度を増しながら、勇者を襲った。
「終わりだ、勇者よ」
魔王の攻撃が止んだ。聖剣を
「ディメンションリッパー!」
魔王が上段から剣を叩きつけた。勇者は避けもせず、魔王の攻撃に正面から立ち向かった。
空間が裂け、全てを
十六夜は閃光を弾き、再び二本に
合体した二刀が強い光を放つ。だが魔刀から放たれたのは、金色の光ではなく、赤に近い
「
橙色に輝く
魔王の顔が苦痛に歪み、聖剣が地に落ちる。
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