第44話 町のお医者さん

子どものころから通っていた皮膚科がある。


最近、病院へ行ってみると「院長高齢により廃院しました」の手書きの貼り紙が。


嘘でしょ。

ショックだった。



えびすさんに雰囲気が似ていて、研究熱心な先生。

私はその皮膚科の先生が良かった。


「そうですか。そうですか。」と患者さんが話し終わるまで全部優しく聞いてくれる。

そのために一人にかかる時間が長いから、2時間待ちなんて時もざらにある。

町で人気の先生だった。



ある夜中に何者かに刺されて、足がめっちゃ痛くて、汗かいて我慢してたら寝てしまった。

足がつったのかと思ったけど、翌朝赤くはれていた。


これは蚊でもないし、なんだ??


皮膚科に行くと

先生はルーペで観察して、分厚い図鑑を出してきた。


そしてその図鑑を見せてくれながら

「この噛みあとは、このムカデですね。夜行性で小さいから洗濯物にくっついてきたり、部屋に入っちゃうんですよね。」


ムカデの図鑑はちょっと気持ち悪くてよく見られなかったけど。


「よく我慢できましたね。もうほぼ治ってますね。」

「夜中、すごく痛かったです。」


「それは痛いはずです。」

そう言って塗り薬をくれた。




先生はとても話しやすい人だった。

先生の皮膚科がなくなっちゃったなんて残念だ。


きっと町のみんながそう思うだろう。

みんなに愛されるTHE町のお医者さんだった。



こんどムカデに噛まれたら、どこにいけばいいんだろう。笑




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