第32話 着物デート
4年前の今日、着物デートをした。
元職場の先輩、私のあこがれの姉さんと一緒に鎌倉へ行ったときのことだ。
私は着物が好き。
でも着物を着ていくところってなかなかない。初詣とか・・・
ひいばあちゃん→母→私、着物が好きな人は引き継がれている。
私は、ひいばあちゃんが母の為に買ったという着物を母に着付けてもらう。
私の着物が好きな話をひょんなことから、姉さんに話すことになり。
姉さんは普段から着物を着ていることを知り、
着物デートをしようと誘ってくれた。
その日は、オレンジというより、柿色の着物に深緑の花と葉っぱの絵の着物にした。
お揃いの草履もある。
その着物はずっと着てみたくて何度も母の引き出しを開けていたものだ。
その日初めて、袖を通した。
着物は見たときは派手すぎかなと思っても、着てみると落ち着いて見えたりする。
茶色のニットのポンチョを羽織り、水色の小さなバッグ。
小さめのイヤリングに、髪は横でお団子に結んだ。
ドキドキしながら一人で電車に乗り、鎌倉へ。
着物でひとりで遠出するのは初めてだった。
電車や駅では人にジロジロ見られるのがなれなかった。
姉さんとは鎌倉の長谷駅で待ち合わせした。
改札前で待っていると、余裕のオーラで手を振って向かってくる姉さん。
暗い紫に大きいオレンジの花柄模様の着物で登場した。
しかも、黒のハットに、黒の皮のカバン。
着こなしがおしゃれすぎる。かっこいい。
姉さんと並んで歩きながら、鎌倉の町を散策した。
お抹茶を飲んでみたり。
(お抹茶のお店のおばさんに外国人に間違えられ、英語で番号札を呼ばれ、「ありがとうございます」と返事をしたら、あらまって微笑まれた。)
外のテラスのあるレストランでドリアを食べて。
そして鎌倉駅近くのツリーハウスのようなカフェを偶然見つけて、これまたテラスでコーヒーを飲んで日が暮れるまでおしゃべりした。
いい天気で、ポンチョを脱いでも歩いたら暑いくらいだったのに、気付いたら外は夕日でテラスでは寒いくらいになっていた。
あっという間に時間が過ぎる。
不思議。
ほんの数分だって何を話そうか、何か話さなくちゃと思うような人もいるのに。
帰らなくてもいいならいくらでも話が尽きない人もいる。
姉さんとは毎回、名残惜しく帰ることになる。
もっと話したいのにーそんな人がいるというだけでも幸せだ。
4年前の今日、あー幸せだったな。
あの日の写真を見た。
無性に姉さんとおしゃべりしたくなって、あの頃の日々が恋しくなった。
もうずっと会えていない。
しばらく着物も着ていない。
恋しいな。
終
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