第33話 我慢の限界

高校1年生の時、パフォーマンス科だった私は毎日のようにダンス、歌、芝居の稽古があった。


私は小学5年生からダンスを始めたので、高校入学時には他の人よりダンスが出来た。

パフォーマンス科に入るのに、ダンスなどの経験は問わないので、高校からダンスを始める人も多かった。


入学する時から、担当の先生の実力主義というのを聞いていたので、学校内のオーディションやテストを頑張った。


パフォーマンス科なのでテストも歌、ダンス、芝居、殺陣と科目ごとにあり、公演があるとそれに向けてのオーディションが毎回行われる。

オーディションにはパフォーマンス科代表の先生(芝居担当)、外部講師の歌とダンスの先生、3名が立ち会った。


入学して初めての公演のオーディション。

ダンスと歌があった。


私は1年生だったが、選抜ダンスメンバーに入り、センターの場所に選ばれたり、ソロをもらえたりした。


運もあるかもしれない。

でも運だけではない。実力主義だと言われたので、とことん今までの経験を活かしオーディションにのぞんだ。それだけの練習もした。



しかし、学校という場所である手前、やはり実力主義ではなかった。

3年生、2年生、1年生、やはり先輩の方が有利であり、先生のお気に入りはもっと有利だった。


私は、ダンスの先生に実力をかってもらえた幸運でメンバーに入った。

入学早々、3年生の先輩に混ざって夜まで練習に参加した。


パフォーマンス科のトップでもある3年生の男子の先輩がいた。その先輩に、演出の中で花を踊りながら渡しにいくというパートを任せられた。


私は、選抜メンバーで選ばれたことも、センターやソロをもらえたことも単純に嬉しかった。必死に本番に向けて練習をした。


もともと一匹狼のように、つるむほうではなかったので、1年生ひとりでも気にならなかったし、先輩の中にいるのも平気だった。



しかし、ことは起きた。


「お前、やばいよ。」

ロッカーがたまたま隣だった3年男子の先輩に言われた。


それは突然だった。

あまり話したことない先輩だったが自分に言われたことは確かだった。


「何がやばいんですか。」

「お前、めっちゃ言われてるよ。」


「え?何をですか?」

「悪口だよ。3年の女子たち。」


「あぁ。そうなんですかぁ。」

やばいと言われてもどうしようもなかった。


直接言われているわけではなく、むしろ先輩たちは優しくしてくれた。

それは思い違いで、私のいないところでは陰口を言われているらしい。

まぁ、無理もない。


入学してすぐにメンバーに選ばれて、トップのモテモテ先輩に花を渡す役までもらったのだから、いろいろ言われるだろうな。

それはだんだんと感じるようになった。

ちなみにトップのモテモテの男子の先輩に、私は全く興味がなかった・・・

女子のやっかみはいろいろと大変だ。



でも気が強かった当時の私は何も気にすることなく、練習を続けた。

センターで踊りたいなら、陰口言う前に練習すればいいのに。そう思っていた。


しかし、だんだんとおさまるどころかヒートアップしてきた。

先輩に嫌われないようにと、同学年の子たちも先輩たちに合わせるようになった。

私と友達でいてくれる子もいて、こっそりと教えてくれた。


「ダンスの先生とできてるから選ばれた。」そんな噂が流れていると。

嘘でしょ?


ダンスの先生と入学して初めて会ったけど。

というか、ダンスの先生と私何歳差だと思っているの?


あきれた。その噂もほっといた。



ただ踊りたいだけなのに、いろんなものがくっついてくる。

あぁ。どうしたものか。

入学して2か月ちょっとで私は孤立した。



そんな1学期の終わり、ダンスのテストが行われた。

学年ごとに行われ、ひとり持ち時間は3分?だったか、ダンスをみんなの前で披露する。


私は衣装も曲も振り付けも自分でしたものをもっていった。

オーディションとは違い、テストの日は観客がいる。

2年生、3年生の先輩がお客さんだ。その日はみな緊張している1年生のために拍手で迎えてくれる。


私は、また陰口を言われるのは目に見えていたので、あえて学校のダンスのスタイルとは変えて、HIPHOP(簡単にいうとクラブで踊るような重いビートの曲)で踊った。


攻撃的な振り付けと音楽でその場の空気をがらっと変えたかった。

無言の反抗とでも言おうか。そんな私のステージになった。


予想通り、踊り終わるとシーンとなった。

しかし、そこでなんと2年生のブラジル人の男子の先輩が「フォー!」と盛り上がってくれたのだ。


そして、それに連なって、その先輩と仲良しのダンス上手いグループ4人くらいの先輩たちが皆の前で褒めてくれた。


それはそれは嬉しかった。


そしてその中にひとり女子の先輩がいて、そのテスト以降、一緒にいてくれるようになった。

やっと味方になってくれる先輩が現れた。



2学期が始まり、私の喜びは裏切られた。

もっと大きな闇が待っていようとは。


パート2に続く。






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