第11話 青春は涙の解散
青春。
考えると私の青春はダンスがほとんどだった気がする。
小学5年生の春にダンスを始めた。ヒップホップというジャンルで、ストリートダンスだ。
姉がジャズを習っていて、私は姉のレッスンについていってはスタジオの後ろで真似したりしていた。
きっと私もやりたがるだろうと思っていた母に、私は衝撃的な一言を放った。
「お姉ちゃんのと違うダンスがやりたい。」と。
私のわがままを聞いてくれ、私はダンスを始めた。
それからというものの、ダンスまっしぐら。
クラブデビューをしたのは中学生の時。
しかも六本木のクラブ。
未成年であるのでもちろん、ショータイムが終わると早い時間に帰宅。
クラブ以外では、外の野外ステージ、お祭り、ホールでのショータイムや舞台、コンテストなど、いろんな場所で踊った。
嬉しいことに、MVやCMのバックダンサーやダンスTV番組など、メディアの仕事をさせてもらったことは大事な思い出の1ページだ。
初めて自分で振り付けをしたり、チームを作ったりした時のことだ。
私は高校1年生だった。
チームは7人。私は一番年下で、高2が1人、高3が5人だった。
選曲、曲の編集、振り付け、構成、衣装、全て自分たちで作るのはとても楽しかった。
毎日のように集まって練習した。
地域の会議室や体育館を借りて練習することもあったが、お金がかかるので
基本、外練だ。
公園での練習が多かった。駅の近くの公園で夜まで練習しているとお巡りさんが注意しに来るので、お巡りさんが来ると隠れたりするのも楽しかった。
暑くても寒くても外で踊った。
チームメンバーと一緒にいるのが好きで寒くても平気だった。
コンビニでご飯を買って外で食べるのもいつものことだった。
練習以外にも、一緒に出掛けたり、誰かのアルバイト先に他のメンバーで行ってご飯を食べたり。
高校は違ったのでメンバーの文化祭に行ったり、何かと一緒に過ごしていた。
私たちは何回かショータイムに出たが、その時その時、学校の試験だったりと予定が重なったりして6人で出たりと構成を変えながら本番を迎えていた。
ある時、渋谷のクラブでのショータイムに出演が決まり、初めて7人全員そろっての出演予定だった。
衣装もお金をかけずに、安いTシャツとパーカーをお揃いで買って、
スプレーで手書きのペイントをした。
公園でペイントをして乾かして、手作りの衣装も完成した。
振り付けも完成し、仕上げの段階だった。
その日は地域の会議室を借りていて、そこで練習していた。
18:00からの3時間、その間に事件は起こった。
何がきっかけか今となってはよく分からなくなったが、男子と女子の間で意見が分かれた。
男子2、女子5の割合だったが、振り付けについてかダンスについてか言い合いになった。
意見が違うことはよくあることで、言い合いのような話し合いも何回も乗り越えてきたメンバーだったが、その日は何かが違った。
男子のやる気がなくなっていて、「じゃあ辞める?」そんな声が出た。
なぜか分からないが、その日の言い合いはおさまらなかった。
それぞれのいろんな感情が高ぶっていた。
男子のひとりがイスを部屋に投げて、私はその状況が悲しくて泣いた。
そして怒ったメンバーがひとり、ふたりと部屋を出ていきその日は終わった。
私は心の中で、きっとなんだかんだで戻るだろうと思っていた。いつも通りにみんなで踊って、後で笑いごとになるだろうと。
たしかに後日、笑い話になった。
けれど、メンバー全員が集まったのはあの夜が最後となった。
結局、チームは解散。
本番もキャンセル。
衣装は着ることもなく、その振り付けは誰にも見せることなく、幻のネタとなった。
後になって、いろんな事情は聞いたが、それでも解散したことに違いはなかった。
積み重ねた絆も、時には一瞬で崩れる。
あれから10年は経った。
それぞれには、その後会うことはあっても、7人で会ったことは無い。
みんなどこで、何をしているのかな。
風の便りで耳にはするが、正確には分からない。
もう何年も会っていないが、一緒に過ごした時間は幻ではない。
愛しい思い出であり、今でも大好きなメンバーだ。
会いたいなという気持ちと、会えないんだろうなという気持ち。
今会ったら、きっと笑って踊れるんじゃないだろうか。
そんな予定はないけど、そう願っている。
終。
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